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第154話
「じゃあ写真撮ってもらおうか」
そう言って歩き出す正和さんに渋々ついて行く。
「二人一緒で良いですかー?」
「うん、お願い」
「じゃあ四枚撮りまーす」
クラスメイトの渡辺が次々とシャッターをきっていく。俺は正和さんにされるがままポーズをとったが、どれも俯きがちだ。
「お渡しはどちらの方法にしますか?」
そう言って渡辺が指差した看板を正和さんが見る。
『写真はデータでのお渡しになります。
メール、もしくはSDカード・CD等に直接お入れする事も可能です。
※データ紛失等には一切責任を負いません。持ち込みは空のメモリーカードをオススメ致します。
※頂いたメールアドレスは送信後、速やかに削除致します。
【CD-ROM 100円】もあります。』
「じゃあ、これに入れてもらえるかな」
そう言って携帯からメモリーカードを取り出すと渡辺に渡した。彼はパソコンを使って素早くデータを移す。
「ご確認ください」
受け取ったカードを携帯に入れて写真を確認すると、正和さんは微笑んだ。
「ありがとう。あと、この服ってこのまま借りることできる?」
「ちょ――」
(正和さんっ!)
抗議の為に開いた口は正和さんの手で塞がれて喋れない。
「はい! 貸し出しは三十分五百円になります」
「じゃあ三時間お願い」
そう言って十枚綴りの券を六枚渡した。クラスのやつは俺を見てクスクス笑っている。
引きずられるように教室の外に連れて行かれ、女装姿が恥ずかしくて下を向き大人しくなると口から手を離された。
何だこの羞恥プレイ。歩く度に揺れて太ももに当たるスカートが凄く気になるし、スースーして落ち着かない。
「お腹空いたでしょ。何食べる?」
正和さんはパンフレットを見ながら、俺に聞いてくるが、この格好であちこちまわりたくない。それに昨日食べた物と被るのは嫌で、近くの模擬店を指差す。
「どっちが食べたいの?」
「どっちも」
「ふふ、分かったよ」
正和さんはスタッフに声をかけると、フランクフルトとお好み焼きを二つずつ買ってきてくれた。模擬店の近くに設置された椅子に腰掛けて、フランクフルトを頬張る。
「たまには良いね、こういう行事も」
「……全然良くない。何で女装なんか」
「可愛いよ。男の子の制服も良いけど、やっぱりスカートはそそられる」
正和さんが訳の分からない事を言ってるので、食べる事だけに意識を向けた。お好み焼きの入ったプラスチック容器を開けて、蓋側の方に食べ終えたフランクフルトの串を置く。
割り箸を割って、箸でお好み焼きを切ると意外にもふんわりしていた。味は普通でどこにでもある無難な味。
食べ終えて二人で席を立ち、ゴミ箱に容器などを捨てて歩き出す。
「純はまわりたい所ある?」
「別に」
だってこんな格好でウロウロしたくないし。
「……そう」
そう呟いた正和さんがニヤッと人の悪い笑みを浮かべた事には気付かずに彼について行く。
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