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第184話
体を滑る温かい感触に目を覚ますと、タオルでお腹を拭いてくれてた正和さんと目があった。
どうやら意識を手放してから、それ程時間は経っていないらしい。
もう、普段通り名前で呼んでも良いんだろうか。恐る恐る小さな声で呼びかけてみる。
「ま、正和さん……?」
「んー?」
(あ、元に戻って……)
「っ……っ、うぅっ」
「純、どうした? ……体痛い?」
首をふるふると横に振ったら、瞳に溜まった涙が零れる。
「こわ、かった……」
いつもと違う少し冷たい雰囲気の正和さんが怖かった。道具ばかりであまり触れてもらえなくて寂しかった。初めての体験ばかりで、おかしくなると思った。
「……酷くしてごめんね」
彼はタオルをサイドテーブルに置いて、俺の隣に来ると横になった。優しく抱き締められて、気持ちが落ち着く。頭を撫でてくる手が気持ちいい。
正和さんの胸に顔を埋めると、彼の匂いに包まれて幸せな気持ちになった。しばらくそうしていると、正和さんが口を開く。
「……たまにで良いから、またさせて」
「う、うん……でも……」
「ん?」
「他の人に叩かれても、あんなに……き、気持ち良くなるものなのかなーって……」
恥ずかしくて顔が赤くしながらそう言えば、正和さんは眉を顰めて声音が少し低くなった。
「何、俺以外に叩かれたいの?」
「ち、違う……そうじゃなくて……! 俺痛いの嫌いなのに、そのっ……き、気持ち良かったから……」
機嫌の悪くなりかけた正和さんに慌てて弁解すると、彼は意味を理解したのか優しい顔に戻る。
「あー、下手な人に叩かれたら痛いだけだと思うよ? 淫乱ドMちゃんなら、それさえ気持ち良いんだろうけど。……あとは愛情」
「愛情……?」
「そ。純は俺のこと大好きで信頼してくれてるでしょ」
「……どういう意味?」
正和さんの言っていることがいまいちよくわからなくて聞き返すと、彼はクスッと笑った。
「子供には難しかったね」
「っ……子供じゃないし」
意味を教えてくれない正和さんに、頬を膨らませて拗ねて見せれば、彼は急に真剣な表情になる。
「駄目だよ、俺以外に叩かせたら。浮気は許さないから」
「――――」
「この体に触れて良いのも、傷つけて良いのも俺だけ。俺の下で可愛く泣いてればいいんだよ」
そう言って俺の鼻先にキスを落とした。
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