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第188話

 いつも通り四人で昼食をとりながら、くだらない話をして笑い合う。  今日は体の痛みもほとんどない。お尻も傷跡がまだあるものの痛みは全くなく、強いていうなら首もとにつけられたキスマークが気になるくらいだ。  シャツのボタンを完全に留めていれば、見られることもないのだが、第一ボタンまで留めてしまうのは凄く違和感がある。今が冬で良かった。  昨日はお昼を食べた後、正和さんとドライブに出かけた。本当に、ただのんびりと景色を見ながら車を走らせていただけで。地図に弱い俺はどこまで行ったのかよく分からないが、結構遠くまで行った気がする。途中、道の駅みたいな所に立ち寄り、ソフトクリームを食べて休憩した。  一人だったらそんな長距離のドライブなんてしようとも思わないが、正和さんと二人だと話してるうちにあっという間に時間が過ぎて楽しかった。  今日から十二月。もうすぐ期末テストがあるから、そろそろ本格的に勉強しないとまずい。それに進路希望の紙も配られた。進路なんて全く考えていなかったし、どうするかは正和さん次第のような気もする。  特に就きたい仕事があるわけでもないし、進学する気もそれ程ない。普通の家庭環境だったら大学に行ってたのかな、きっと。なんて考えるが、肩代わりしてもらった借金の分と学費くらいは返したいので、働くことになるのかもしれない。  まあ、どうするにしてもまずは彼に相談しなくては。 (それにしてもこのコロッケ美味しいなー。何で冷めてもこんなに美味しいんだろ) 「相楽ー、先輩呼んでるぞ」  あまり話さないクラスメートに話し掛けられて驚くが、どうやら用件を伝えてきただけらしい。 (誰だろう)  教室の出入り口に立つ人物に目を向けるが面識はない。そもそも部活にも入ってない俺は他の学年と関わる事も少ない。 「知り合い?」  拓人の問いに首を振り、箸を置いて席を立つ。 「ちょっと行ってくる」  お弁当箱の蓋だけ閉めて、足早に先輩の元へ向かった。 「純くん、確か体育委員だよね? ちょっと来てもらいたいんだけど今大丈夫?」 「あ、はい。大丈夫ですけど、どうしたんですか?」 「二月にマラソン大会あるでしょ? その練習がもうすぐ始まるから道具を運び出して欲しいって」  この人は体育委員にいなかったと思うが、おそらく体育委員の友達から伝言させられたのだろう。 「わかりました」  先輩と一緒にそのまま体育用具室に向かう。  部活に入ってない俺は、今年クラスメートの推薦により半強制的に体育委員にさせられた。本当は委員会なんてやりたくないが仕方がない。実質、体育祭とマラソン大会、球技大会くらいしか活動はないから比較的楽な方だ。  階段を降りて廊下を真っ直ぐ進む。  お昼休みとあってどこも賑やかだが、体育館の方は人気(ひとけ)がないのか、生徒の声は聞こえなくなり静かになった。  体育館の中にある用具室の扉を先輩が開けくれて中に入る。既に他の人も来ていたようで、跳び箱の奥には頭が二つ見えた。  すると、ガラガラッと引き戸が閉まる音がして、そのままカチッと施錠される。 「え……?」  不思議に思いながら音の方に振り返ると、先輩に肩を掴まれて、そのままグッと押され無理やり座らせられた。

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