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第198話 (正和視点)
そんな事をモヤモヤ考えていたらあっという間に数時間過ぎて、純が学校から帰ってくる。鞄を置いてリビングに来た純はニコッと笑った。
「ただいま」
「おかえり」
いつも通りの様子の純。もし浮気をしていたら、こんなに平然としていられるだろうか。
「じゅーん」
甘えた口調で名を呼ぶと、俺のことを訝 しげに見る。
「……なに?」
「何で最近エッチしてくれないのー? 俺のこと嫌いになった?」
「っ……嫌いになんて! ……だ、大好き、だし」
冗談めかして聞いたけど、泣きそうな顔をして慌てた口調で言ってくれる。
(……可愛い)
「でもこのままエッチしてくれないんだったら、そういう店行って来ちゃうよ?」
「っ……!」
純は息を詰めて、凄い悲しそうな顔をして俯いてしまう。本当に俺のこと大好きなんだな、なんて思ったら凄く可愛くてそっと抱き締める。
「ごめんね、冗談。……もしかしてこの間のプレイ嫌だった? だったらもう鞭とか使わないよ」
頭を撫でて純の顔を覗き込むと、純は首を左右に振った。
「い、嫌じゃないっ……気持ち、良かった、し……」
「じゃあ何で?」
「っ……」
唇を噛んで答えようとしない純に、さっきから聞きたかったことを聞く。
「……浮気でもしてるの?」
「し、してないよ」
だが、純はまるで図星だとでも言うような顔をする。
(え……)
内心焦りながらも冗談めかした軽い口調で尋ねてみた。
「本当に誰ともしてないの~? 体にきいてみようかなぁ」
「っ……ほ、ほんとに……して、ない」
いつもならするわけないっと威勢良く言ってきそうなものだが、震えているし目も泳いでいて嘘ついているのが一目瞭然だ。
(嘘だろ……)
信じがたい事実に少し眩暈がする。
(何で? 回数足りなかった? もっと優しいプレイが良かった? 可愛い子に誘惑された?いや、そもそも相手は男か女か――)
「誰とそういう事したの?」
「っ……ち、違っ」
「何が違うの? 誰としたか聞いてんだけど」
純の手首を掴んで後ろに捻り上げる。
「痛っ、ま、正和さ」
「答えなよ。誰としたの?」
ギリギリと手首を握る手に力が入って純は顔を歪めた。
「ぁ、っ……せ、せん、ぱい、に……」
「へえ、男ね。……女ならまだしも俺以外の男に抱かれたんだ」
「ち、違うっ……痛っ」
「違わないでしょ」
思わず出てしまった舌打ちに純は体をびくりと揺らす。手首を掴んだまま強引に俺の部屋まで引っ張って行き、ベッドに投げ捨て馬乗りになると、純はボロボロと涙を零し始めた。
「違、う……違う……浮気じゃ」
「何が違うの? そういう事したんでしょ」
「だって、無理やり……っ、イかされた、けど……おれ、おれ……」
「俺以外の男に触られてイったんだ」
冷ややかな目を向けると、肩を震わせて涙をボロボロ零す。今の泣き顔はちっとも可愛くない。むしろ腹立つ。
「俺とはしないくせに。そんなに気持ち良かった?」
「うっ、ひっく……うぅ、っ」
「あのさあ、泣いてないで話したら?」
苛立ちが抑えられず声にそのまま出てしまう。いつもよりだいぶ低く冷たい声に自分でも少し驚く。
「っ、ぅ……気持ち、悪かった」
「イったのに?」
「だ、だって薬を」
「ふーん。……薬って言ったって市販薬でそうそう効くやつなんてないし、高校生が手に入れられないと思うけど?」
先ほどから言い訳するように答える純に苛立ちが募る。
「だって、ほんとに」
「じゃあどんなのか言ってみなよ」
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