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第199話

 何でこんな事になってしまったのか。俺の話を全く信用してない様子で責めてくる正和さんが怖い。  もっと早く、自分からちゃんと話していれば、こんな事にはならなかったのだろうか。 「どんなって……粉で、苦くて……袋が銀色で……」 「……絵柄は?」 「ピンクのラインが……入ってた気がする……たぶん」  当時の状況を思い返して、震える声で答えた。彼は俺の上から降りるとクローゼットを開けて何かを探す。 「これ?」 「っ……!」  戻ってきた正和さんが手にしていた物は、あの時見たものと酷似していて、コクリと頷く。 「ふーん。……これ大して効かないでしょ」  冷たく言い放たれて、目の前が暗くなる感じがした。 「そんな……」  それなら俺は、本当に先輩達の愛撫に感じてしまったというのか。正和さん以外の男に触られて熱くなり、後ろが疼いて熱を求めたのも、薬のせいではなかったのだろうか。 「他の男と浮気してごめんなさいは?」 「っ、だって、無理やり――」  再び俺の上に跨がって、前髪を掴むとベッドに押し付けるように引っ張られて顔は自然と彼の方を向く。 「とりあえず謝りなよ。エッチしたんでしょ」 「本当に、浮気じゃ」 「もし、無理やり襲われたんだとして、俺に黙ってたんでしょ? さっきだって嘘ついて……凄い怒ってるからね」 「っ……俺、は……おれ、は」  浮気なんてしてない。抱かれてなんてない。渋々咥える事にはなったけど、それ以上のことはしていないし、触られて本当に気持ち悪かった。  ボロボロと次から次に溢れてくる涙で正和さんの顔がぼやける。  どうして話を聞いてくれないのか。どうして――。 「……純、俺を見て」  意味がわからない。見ているのに見ろ、とは、どういうことだろう。  少し優しくなった声音にも気づかず、みっともなく泣きながら、ぼやけた視界で正和さんの目を見る。 「ここにいるのは誰」 「ひっく、ぅ……正和、さん」 「そうだね。純は俺以外に体を触らせたよね」 「それは……ごめんなさい、でも」  反論しようとしたら、強い口調で名を呼ばれ俺は口を噤む。 「純。……ちゃんと俺のこと見て。余計な事は考えないで。今俺はどんな気持ちだと思う?」 「凄く……怒って、る……っ」 「そうだね」 「……ごめん、なさい」 「それは何に対して謝ってるの?」  そんなの謝れって言われたから。正和さんが話を聞いてくれないから。 「ぅ、っ……うぅ、っ」 「俺は言ってくれなかった事と、嘘ついた事に凄く怒ってる」 「ごめ、なさい……っ、ひっく」 「本当に襲われたんだったら、それは責めて悪かったよ、ごめんね。でも隠してたのは純だよ」  そう言って俺の頬をそっと撫でる正和さんの表情は怒っていると言うよりも、苦しそうで悲しそうな顔をしている。 「ごめん、なさい……言わなくて、ごめんなさい」 「うん。……俺も疑って酷いことしてごめんね」  俺の上から降りると隣に座って髪の毛を優しく梳いた。その仕草にも怖くてビクッと震えてしまう。 「どこ触られた? 先輩って仲良い人? ……ここにも、いれられたの?」  制服のズボン越しにお尻の割れ目をなぞられて、首をふるふると横に振る。

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