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第203話

 触れ合った所が溶けそうなくらい甘いキス。最後にちゅっ、ちゅっ、と吸い上げられて、ゆっくりと唇が離れていく。 「あっぁ、強くしな、で……あぁっん」  尿道バイブの振動を強くされて意識が飛びかけるが、首に噛み付かれて目を開く。 「あぁっ、まさかず、さ……あぁっ、ん」 「こうやって酷く抱くのも、優しく抱くのも俺だけ。……他の男の感触なんて全部忘れちゃいな」  そう言った彼の声はどこか遠く、ぐずぐずに溶かされた頭では理解できなかった。 * * *  尿道バイブは引き抜かれたが、先ほど入れられた後ろの玩具がぐねぐねと蠢いて攻め立てる。何度も射精したせいで、体は重く怠い。 「純。まだ寝ないで」 「痛っ、ぁ、ごめ、なさい」  口調も声音も眼差しも触れ方までも全て優しくて、甘いキスを落とすのに、強過ぎる刺激を与えられて意識を飛ばしかけると噛み付いてくる。  首周りと太ももは、正和さんのつけた噛み跡だらけで赤くなり痛々しい。 「気分転換にちょっと体動かそうか」 「な、に?」  彼は枕元に来ると俺の手首をそっと持ち上げ鎖を外す。 「おいで」  優しく微笑んで甘い声で呼んでくる正和さんは、手にリードを持っている。ゆっくりと体を起こされて、右手首には先程の鎖の代わりにリードがつけられた。 「まさかず、さん……?」 「少し散歩しよう」  軽くリードを引っ張って歩き出す正和さん。  彼は何を考えているのだろう。接し方は今までにないくらい優しいし、怒っていないと言っていた。だけど、やっている事は普通じゃない。 「あっ、も、やだ……おれ、おれ……」  涙がポロポロ零れて、駄々をこねると彼は手で優しく目元を拭ってくれる。嫌だから、とか感情的な事ではなくて、体の限界が近くて溢れた生理的な涙。先程から許容範囲は()うに超えていて、無理やり意識を保っている体はかなりつらい。 「純。俺のとこ来て」  それなのに、正和さんに優しく呼びかけられたら、不思議とベッドから立ち上がる事ができた。お尻の異物感に体をガクガク震わせながら正和さんの前まで行くと、髪を梳くように頭を撫でられる。 「いい子」 「はぁ……はぁ……ん」  ソファの近くまで歩いたが、この先どれくらいこんな事が続くのかと思ったら、耐えられなくて、崩れ落ちるようにぺたりと床に座り込む。 「は、あぁ、も、歩けな……っ」 「じゃあここで休憩しようか」  正和さんは目の前にしゃがむと俺の頬を撫で、お尻に刺さった玩具に触れる。 「や、やだ……俺、本当に歩けな」 「うん、知ってるよ。だからここで休憩」  本当に彼が何を考えているのか分からない。優しいのに……怖い。 「ま、正和さっ――」 「ごめんね。……ゆっくり休んで」  チュッと額にキスを落とされて、玩具の振動を強くされ、限界で朦朧とした意識は完全に闇に落ちた。

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