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第204話 (正和視点)

 本当は今優しくしてあげるべきなのは分かってる。襲われて怖かったに決まってるし、そんな事があったなんて言い出しづらいに決まっている。純が隠してしまった気持ちも分からなくもない。  それに逃げられなかったのは純が俺を守ろうとして抵抗できなかったせいでもある。人数的に敵わなかったかもしれないが、それがなければ少しは違ったかもしれない。俺はチクられた所で痛くも痒くもないが純はきっと心配したに違いない。  そんな状況でも貞操を守ったなんて凄いと思う。普段から俺に悪戯されて感じやすくなってる純は、薬なんか使われたら流されてしまってもおかしくなさそうなものなのに。  あの時は純の話がどこまで本当か見極めたくて、大して効かないなんて言ってしまったが、輸入品でそこそこ効果もある。きっと助けられた後も辛かっただろう。純の気持ちを考えると胸が痛い。  気を失ってしまった純の背中を優しく撫でて、ベッドへ運び玩具を引き抜く。  あの三人は、普段から生活態度も成績もあまりよくなかったそうなので、表向きはそう言った理由で、退学処分にしてもらった。  だが、本当に許せない。  三人がかりで、それも恋人がいると分かっていながら、騙して、脅して、無理やりだなんて、退学なんかじゃ気が済まない。  スースーと寝息を立てて静かに眠る純の頬を、そっと撫でると僅かに身じろいだ。  純は仕返しなんて望まないだろうからしないけど、そうでもしない限り許すことはできない。 (本当……ムカつく)  いや、一番許せないのは自分だ。俺のせいで変な噂が立ち、襲われて、助けることもできなかった。それなのに、俺は純の事を疑って一方的に酷く責めたりして、なんとも情けない。  苦しい思いをして一人で抱え込んでいた純を更に傷付けるような事をするなんて。本当、最低だ。 「ごめんね、純」  所々に残る俺の噛み痕が痛々しい。傷ついた純を更に怯えさせて、俺は何をしてるんだろう。

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