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第208話 【第5章】

 昨日は夕方まで寝た後、久々の食事をした。前日のお昼にお弁当を食べて以来だったから、お腹は凄く空いてるのに、あまりたくさんは食べられないという不思議な感じだった。  そして学校に無断欠席してしまったと思っていた昨日は、祝日で元からお休みだった。 「送り迎えするよ」  ご飯を食べて学校へ行く準備をしてからリビングに戻ると、ソファで新聞を読んでいた正和さんがそう言った。 「え、いいよ。拓人と行くし」 「じゃあ、待ち合わせ場所まで送る」 「いや、わざわざしてもらわなくても……」  特に何も考えずに言葉を返すと、彼は少し怒った顔をして新聞を閉じた。 「心配だから言ってるの。大人しく俺に送迎されてなさい」 「……うん。あ、じゃあ帰りは学校まで来てもらってもいい? 拓人、部活あるとか言ってたから一緒に帰れないと思うし」 「もちろん。今日行くとこあるからちょうど良かった」  素直に彼の言葉に甘えれば、正和さんはふわりと笑った。 「行くとこ?」 「ふふ、今日は午前授業だよね?」 「ん、そうだけど……どこ行くの?」 「どこだと思う?」  見当も付かないから聞いたのに、聞き返されてしまって固まる。 (どこだろう? クリスマスイブだからデートとか?)  いや、でも行くとこあるって事はもっとなんか大事な用事なんだろうか。 「え……ご飯どっか食べに行くとか?」 「それもいいね」  結局分からなくて、当たり障りない答えをすると、彼は楽しそうに笑いソファから立ち上がる。コートを羽織って出かける準備を始めた正和さんに、俺も慌ててコートを着て玄関までついていく。  なんとなくこれ以上聞けるような雰囲気じゃなくなったので、教えてもらうのは諦めて彼の車に乗った。 「終わるの十二時半くらいだと思う」 「じゃあ、その頃迎えに行くね」  車だといつもの交差点まであっという間に着く。最初の頃は、送り迎えなんて友達と帰れなくて嫌だなんて思っていたけど、久々に送ってもらったら車内は暖かいし彼と一緒だし、これも悪くないかな、なんて思った。  帰りはHRがなかったので、予定より十分早く帰れる事になった。今日は四教科とも期末テストの返却と、答えの解説のみだったのでとても楽だった。明日は終業式だから、授業もしばらくない。  学校を出ると既に正和さんの車が停めてあり、助手席に乗り込む。  前だったら窓から彼のことを覗いて、乗って良いよみたいな合図を見てから乗っていたのに。なんだか夫婦みたいだなって思って少し恥ずかしくなった。 「どこ行くの?」 「ホテル」 (え、ホテル……? なんで?) 「ヤラシイコト想像した?」 「……してない」  少しムッとしてそう答えれば、彼はおかしそうにクスッと笑う。 「冗談だよ、怒んないで。……お昼食べに行くだけだから」  そう言った彼は暖房を少し弱めて、車内に音楽をかける。よく分からないけど、ピアノが心地よく響く落ち着いた曲だ。  お互い無言になるが、気まずさは微塵もない。何か話さなきゃと思うこともなくて、ただぼーっと移り変わる景色を見ていたら手を握られた。  正和さんの暖かい手に一瞬ドキッとするが優しく握り返す。

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