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第212話
* * *
昨日は夕飯までの間に宿題を少し進める事ができた。その後は美味しい鉄板焼きのコースに満足して、彼と一緒にお風呂に入り、厭らしい雰囲気にはなったものの早々に眠った。
「おはよう」
「……おはよう」
耳元で声をかけられて、まだ目が開かないまま返事をすると、彼はクスッと笑った。
「起きられる?」
「ん……」
優しく頭を撫でながら聞いてくる彼に、微睡 みの中、俺は適当に返事をする
「もう……ご飯作ってくるからね。朝食までに起きてこなかったらお仕置き」
頬にチュッとキスを落として彼は部屋を後にした。眠いからもう少し寝ていたいけど、お仕置きは嫌だ。
大きな欠伸をして目元を擦る。と、眉辺りに硬い物が当たった。グリッと引っかかったその感触に瞬時に目が覚める。
眉を顰めて左手を見ると、そこにはキラリと輝くものがあって、思わず飛び起きた。
(え、え、え!?)
慌ててキッチンへ行き、鮭を焼きながら味噌汁を作る正和さんに詰め寄る。
「ねえ、なにこれ!!」
「ん~?」
これ、これ、と正和さんの前に手をかざすと、彼は『分からないの?』とでも言いたげな顔で返す。
「指輪?」
「そうじゃなくて!」
「……首輪の方が良かった?」
「は?」
顔を歪めると彼はクスクス笑った。
「クリスマスプレゼントだよ」
「クリスマス、プレゼント……?」
「ん。純ってこういう恋人っぽいベタなやつ好きでしょ?」
左手の薬指につけられたそれは、小さめの石がいくつか付いているが、とてもシンプルなデザインで違和感がない。サイズもぴったりだ。
「……ありがとう。でも俺、なんも用意してない」
「いいよ、あとで純のこともらうから」
さらりとそんな事を言って額にキスを落とし、茶碗にご飯をよそった。
「……正和さんは? つけないの?」
「んー、俺はいいよ。宝飾品はあまり興味ない」
「そっか……」
「浮気するから付けないんじゃ……って思った?」
「べ、別にそんなこと……」
ニヤニヤとしながら聞いてくる正和さんから顔を背けると、ご飯をよそった茶碗を二つ渡されて、仕方なくそれをテーブルに運んだ。
朝は待ち合わせ場所まで送ってもらい、拓人と登校した。今日は終業式とHRだけなので短い。
椅子に座って担任の話を聞き流しながら手元を眺めると、キラキラと輝くそれに思わず口の端が緩む。
拓人が振り向いた時、そんな俺のにやけ顔を見たものだから、怪訝そうな顔をした。だが、俺の手元に目線を移し、すぐに理解したようで俺に話しかけてくる。
「なぁ、冬休み遊びに行かね?」
「遊びに?」
「だって最近遊んでないし」
先生が話しているが、教室内が少しざわついているのと、一番後ろの席という事もあり、小声で話す俺たちに目を向けられることはなかった。
「確かに。どこ行く?」
「って言われても特に行くとこないんだよなあ」
「うーん……」
「カラオケかボーリングか……あ、俺の部屋来る?」
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