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第217話

「指輪のお返しくれないの?」 「……っ」  どう言う意味か分からなかったが、すぐに彼の意図してる事を理解した。正和さんは赤くなった俺の頬にキスを落として、少し欲情した低く掠れた声で囁く。 「先に部屋行ってて」  肩にかけていたタオルを体に巻きつけて浴室を後にし、正和さんの部屋のベッドに座って、彼が来るのを待った。  お返し、というと誕生日の時のようなプレイをするのだろうか。  そうじゃないにしても俺をいじめるのが好きな彼のことだ。何か厭らしい事を強要してくるつもりなのだろう。  少ししてタオルを腰に巻いた正和さんが部屋に来るが、袋を提げている彼の手を見て不安が込み上げた。中にはいったい何が入っているのだろう。  彼は近くまで来るとベッドの脇に袋を置いて、楽しそうに目を細め俺のことを見下ろす。 「どんな風に抱かれたい?」  ニヤリと笑ったその顔に、背筋がゾクリと震えた。 「や、優しく……してください」  彼の威圧感に圧倒されて、口元を見ながらそう言うのが精一杯だった。そんな俺を見て彼はクスリと笑う。 「優しく、ねえ?」  意味深長に呟く彼に不安を募らせて、ドキドキと脈打つ胸を軽く押さえた。  ベッドに乗り上げた彼は、胸に置いた俺の手をどけるように握って、そっと唇を重ねる。舌先でつつくように舐められて、僅かに口を開くと口腔をねっとり犯された。  隈無く蹂躙してくる舌に息も絶え絶えになる頃、ゆっくりと後ろに押し倒されて唇が離れていく。彼はタオルを取り払うと、袋から何かを取り出し、仰向けになっている俺の上に跨がった。 「っ……冷たっ」 「動かないの。プレゼントは大人しくしてなきゃ」  そう言って悪戯な笑みを浮かべる彼は俺の胸にクリームを絞り出している。

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