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第221話

 髪を撫でられる感触に目を覚ます。  どうやら正和さんの腕枕で眠っていたらしい。 「おはよう」 「おはよ……あのさ、正和さん」 「んー?」  彼は「どうした?」と優しく訊いてくる。だが、頭が徐々に覚醒してきて、寝起きで何も考えずに言おうとしていた事が急に恥ずかしくなって、ぶわあ、と顔が赤くなり口ごもった。 「……っ」  隠れようと掛け布団を引き上げると、彼はその手を阻み優しくキスを落とした。そのまま深く口付けられて、熱い吐息が零れる。 「ぁ……んん、ふ、はぁ」  体の力が抜けると、唇を離して甘い声音で囁くように再び問われた。 「なに?」 「え、と……その……」 「うん?」 「っ……たまにで、良いから」 「……うん」  言葉を促すように優しく相槌を打つ正和さんに、観念して告げる。 「き、昨日みたいに、優しくして欲しいな……って」  恥ずかしくて全身が熱くなる。顔に至っては蒸気でも出そうなくらいに熱い。彼がクスッと笑うから余計に恥ずかしくなった。 「っ……」 「そんなに昨日のエッチ良かった?」 「~~っ、えっと、その……っ」  ニヤニヤと厭な笑みを浮かべて、揶揄うようにきいてくる正和さんから目を逸らし反対側を向くと、後ろから抱きしめられる。 「可愛い。優しくされたいんだ?」 「い、嫌なら……別に……」 「嫌な訳ないでしょ」  ぎゅっと抱きしめてくる正和さんにされるがままになる。しばらくして腕をそっと掴んで離し、起き上がると彼も体を起こした。 「んー、ご飯にしようか」  伸びをしながらそう言う彼に頷いて、ベッドから降りる。  彼は手早く朝食を作り始め、テーブルにはサンドイッチとバナナ、牛乳が並ぶ。 (昨日言ったこと、覚えてたんだ……)  牛乳の入ったカップが俺の席にだけ置かれているのを見て、嬉しい反面複雑な気持ちになる。 (……まあ、正和さんの背があれ以上伸びても困るし)  くだらない事を考えながら椅子に座ると、彼もすぐに席についた。 「いただきます」  真っ先に牛乳へ手を伸ばした俺を見て、クスッと馬鹿にしたように笑う正和さん。ムッとして睨み付けると楽しそうにニヤニヤと笑みを浮かべた。 「……何」 「いや? 俺はあまり牛乳とか飲んで来なかったからさ」 「っ……」 (むかつく……! フォークぶっ刺してやりたい)  笑いながら嫌味な事を言う彼から目を逸らし、牛乳を一気に飲み干す。無言でサンドイッチを食べ始める俺を見て、彼は終始楽しそうにしていた。

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