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第225話

(……やっぱり怒ってる……よな?)  でもどうしたら良いんだろう。本当の事は話したし、謝りもした。この後どのような対応をしたら良いか分からず、俺から声をかけるべきか迷って、結局何も話せなかった。  その後も、お仕置きされるかとビクビクしていたが、特にそんな事もなく。歯を磨いた後はいつも通り部屋で仕事をする正和さん。  俺はどうしたら良いか悩んで色々考えたが、何も思い付かなかったので、冬休みの残りの課題を終わらせた。  九時頃になって、いつものように正和さんの部屋に行く。だが、いつもなら寝る前になると必ず開いている扉が、今日は閉まっていて、胸がチクリと痛んだ。少し息苦しく感じる。  でも、もしかしたら仕事が終わっていないだけなのかもしれない。  少し躊躇った後、ノックして扉をそーっと開けると、ソファで額に手を置いて、ぐったりしている様子の彼と目があった。彼はチラリとこちらを見やり、立ち上がって扉まで歩いてくる。 「……疲れてるから自分の部屋行ってくれる?」 「っ……ま、正和さん」  冷たい声でそう言って、ドアノブに手を掛ける正和さんに慌てて言葉を紡ぐ。 「嘘ついて、ごめんなさい。もう二度と――」 「おやすみ」 「っ……」  言葉の途中で拒むように扉を閉められて心臓がドクドクと早鐘を打つ。脈が速いせいなのか手や唇も震えた。  今までどんなに忙しくても疲れていても一緒に寝ていたのに。一緒に寝なかった日なんてない。  そう思ったが、思い返すと一度だけあった。  あれも嘘が原因だ。あの時は嘘ついたのは俺ではなく正和さんだったが。妊娠する薬の一件で、彼を拒否して部屋に入れなかった時に別々に寝たくらいで、その日以外は毎日一緒に寝ていた。  とぼとぼと自分の部屋に戻り、ベッドに横になるが眠れそうもない。  仰向けに転がって目を閉じると、ツーッと目尻から零れた涙が髪を濡らす。一緒に寝たくないという事は相当怒らせてしまったのだろう。  そうでなければいつものようにお仕置きをして、すぐに機嫌を戻すはずだ。  ポロポロと零れる涙を拭う事もせずぼーっと天井を見つめる。  何であんな嘘をついてしまったのだろう、と後悔しても遅い。全く許してくれる気配のない正和さん。謝罪さえ拒否されてしまっては、本当にどうしたら良いのか分からない。  ほとぼりが冷めるまで待つしかないのか。  答えの出ない問を頭の中にぐるぐると巡らせて、気付けば夜も深まっていた。泣き疲れて頭がぼうっとする。  窓の外が若干明るくなり始めた頃、俺はようやく眠りについた。

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