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第227話
だが、少しして、静かな室内に玄関の方からガチャっと音が響く。ハッと顔を上げて立ち上がると、彼がリビングに入って来た。
「お、おかえりなさい」
「……ただいま」
ドキドキして震える声で彼に話しかけると、冷たい口調だが、ちゃんと言葉を返してくれたことに安堵する。
「ご飯、食べる……?」
「……いらない」
「っ……あの、正和さん……」
「もう寝るから一人で食べて」
冷ややかに響いた彼の言葉に涙が込み上げた。泣かないつもりだったのに瞳からはボロボロと雫がこぼれ、しゃくり上げる。
自分の部屋の方へ向かって歩き出す正和さんを慌てて追いかけて手首を掴むと、怪訝そうな顔でこちらを見てくる。胸がズキズキと痛み息苦しい。
手を振り払おうとした正和さんより早く口を開いて、頭を下げる。
「ごめんなさい。嘘ついて、ごめんなさい。……本当に、ごめんなさい。もう二度としないから」
許してください、と言う言葉は堪えきれない嗚咽によって、掻き消えた。
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