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第229話

「っ……焼き、いん」 (焼印って、あの熱した鉄を肌に押し付けるやつだよな……?)  本気でそんな事を言ってるのだろうか。正和さんは時折常人の考えつかないような事を言う。とても正気の沙汰とは思えないが、本当にやるつもりなのだろう、目が怖い。 「二度としないんだったら問題ないよね?」  唇を噛み締めて唾液を飲み込んだ後、僅かに震える声で返事をする。 「っ……はい」 「じゃあ、仕置きはするけど、今回は許してあげる」 (よかった……)  どんなお仕置きされるかは分からないが、許して貰える事に胸を撫で下ろした。しかし、彼の表情が再び冷ややかにものへと変わる。 「あと、仕置きの前に一つ聞きたいことがあるんだけど」  そう言って言葉を区切り、目を細める。 「本当に友達の家に行ってたの?」 「え……そう、だけど」  心臓がドキリとする。それは一体どういう意味なのだろう。拓人の家以外に行ったと、……つまり浮気してきたと疑っているのだろうか。 「嘘ついて出かけるくらいだからね、あまり信用できないんだけど。……証拠は?」 「証拠って……」  そんな事を言われても、どうしたら良いんだろう。 「拓人に聞いてもらっても良いけど……あ」  スマホのチャットを開いて彼に手渡す。 「……これが証拠?」  そう言って、疑うような眼差しを向けてくる彼にグッと息が詰まる。これ以上、どう証明したらいいんだろう。 「正和さんっ……俺、ほんとに……」 「ふーん……ばれなきゃ平気、ね」 「っ……」 「……分かったよ。じゃあ、これは信じてあげる」  そう言ってテーブルにスマホを置いた。 「そしたら今回のお仕置きはどうしようか」  彼は少しの間、考える素振りを見せる。俺はどんな罰を与えられるのかドキドキしながら彼の手元を見て待った。 「んー、鞭にしようか。……おいで」  そう言って後ろを向くと、正和さんの部屋の方へ歩き出したので、後をついて行く。扉を開けて中に入るよう促され、今日は一日食事なしかな、なんて思いながら彼の部屋へ入った。 「今日はお仕置きだから手加減しないよ。何回にする?」  彼はそう聞きながら、鞭の入ったケースを眺め、どれにしようかと悩んでいる。 「……決まった?」  選び終えたらしい正和さんが、ケースから一つの鞭を取り出して、それをピンと張る。 「……正和さんの思う回数だけ、お願いします」 「んー、じゃあ百回くらい?」 「っ……」 (百回……手加減なしの、百回……)  本当に何でこんな馬鹿な事をしてしまったのだろう。意識を失うであろう自分を想像して青ざめる。 「百回なんて無理……」  震える声で思わずそう呟けば、無言で冷たい目を向けてくる。 「き、今日と、明日で……半分ずつにしてください」  この前のプレイの一貫でやったのだって結構辛かったのに、お仕置きで、それも手加減なしであればきっと相当痛いはずだ。一度に百回なんて俺には耐えきれない。 「……二回にわけてやれと?」  こくこくと頷いて震える声で「お願いします」と言ったら、彼は目を細めた。その視線に肩をピクリと揺らす。

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