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第230話

「減らして、って言うと思ったけど……ふふ、可愛いね。お利口だからちょっとは免除してあげようか」  そう言った正和さんはいくらか機嫌が戻ったようで、口元をニヤリと歪ませた。服を脱いで床に四つん這いになるよう促され、それに従う。 「手加減はしないけど、持ってる一本鞭の中で比較的優しいやつにしたよ」  彼はソファに座り、俺が脱いでいくのを見ながら、優しく鞭を撫でる。目をスーッと細め、愛おしそうに鞭を撫でる姿を見て背筋がゾクリと震えた。  脱ぎ終わり、絨毯の上に四つん這いになると彼は立ち上がる。 「危ないから暴れないでね。暴れるなら縛るから」  そう言って鞭を軽く振り、ウォーミングアップをする。その様子を見て体を強張らせているとお尻を高く上げるよう言われた。 「じゃあ、自分でちゃんと数えてね」 「……はい」  ヒュッ――パチンッと言う音と共に、臀部に鋭い痛みが走る。一瞬呼吸が止まり、上手く息を吐き出すことができない。 「っっ……ぅ、いち」  その痛みは想像以上で、以前プレイでした鞭はだいぶ手加減してくれていたんだと分かる。 「はっ、っ……ぅ、さん」  六回目の鞭で早くも、もうやめてくれ、と懇願してしまいそうになる。こんな痛みがまだまだ続くのかと思ったら、目の前が真っ暗になった。 「あぁぁっ……じゅ、う」 「……純」  喉をヒクヒクさせて背を仰け反らせ、絨毯にガリガリと爪を立てたら、名を呼ばれて頭だけで振り返る。 「使っていいよ」  痛みで言ってる事がすぐには理解できなかったが、渡されたクッションを受け取った。それを顔の下に置き、両手で握る。 「くっ、ぁ……はぁ、じゅういち」  ぎゅっと掴んでいるからか先程よりは痛みを逃しやすい。 「ひっ……じゅ、よん」  だんだんお尻が熱を持ち、じんじんし始める。痛みに体を捩ると『動くな』と言わんばかりに、姿勢を戻すよう反対側から強く打たれた。  三十回を越えた辺りからお尻がヒリヒリと痛みだし、既に打たれた所に振り下ろされると、物凄く痛かった。全身に汗をかき、顔は涙と唾液でぐちゃぐちゃになる。 「ぅっ……っさん……じゅう、はち、はぁっ、はっ」 「……こっち向いて」  そう言われて、顔を上げゆっくり後ろを向くと、彼もゆっくりこちらに近付いた。 「……騒がないで耐えて偉いね。痛いでしょ」  そう言って親指で涙を拭うように目元をこすった。頬を撫でる優しい仕草に安心する。 「鞭はあと十二回で終わりにしよう。いい子にしてるから残りは免除」 「っ……ありがとう、ござい、ます」  半分免除になった事に喜びつつ、『鞭は』と含みのある言い方をしたので、何をされるのか不安になる。 「喉渇いたでしょ」  そう言ってお茶の入った小さなのペットボトルを差し出してくる。口元にストローをもってきてくれたので、ごくごくと一気に飲み干した。

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