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第238話

「じゅーん」  今日の正和さんは何か裏があるんじゃないかと思うくらい、朝からえらくご機嫌で、朝食作る時なんか鼻歌までうたっていた。  何だか少し気持ち悪い……なんて、そんな事思うだけでもお仕置きされそうだから、すぐに頭の中から消し去る。 「……何?」 「これ飲んで」 「っ……はぁ?」  正和さんに錠剤を渡されて、口に含んだ牛乳を吹き出しそうになる。昨日、散々虐められたのにまだする気なのか。 (付き合いきれない……) 「ただの痛み止めだよ」 「え……痛み止め?」 「お尻痛いでしょ?」  そりゃあ、鞭で叩かれた所は切れてるし、腫れてるし、まともに座れないくらい痛いけど。 「疑うの? ……まあ痛いの好きでいらないんだったらいいよ」  そう言って手を引っ込める彼に慌てて否定する。 「痛いの好きじゃないってば! ね、正和さん、ちょーだい」 「はいはい。でも痛いの気持ち良いって言ってたよ、昨日」 「っ……」  顔が熱い。耳が熱い。素面の時に何でそういう事言うんだ。やめてほしい。 「可愛い」  俺は黙って正和さんからもらった痛み止めを飲んで立ち上がり、空いた食器を正和さんの分と重ねてキッチンへ運ぶ。歯を磨いてリビングのソファに座ろうとしたら、呼び止められた。 「純~、部屋おいで」 「何で?」 「良いからおいで」  そう言って手を差し出してくる正和さんと、何故か手を繋いで部屋に行く事になる。 「うつ伏せで横になって」  言われた通り寝っ転がると、正和はさん俺の太ももに跨がり、ズボンと下着を下ろしてくる 「っ、ちょっ、正和さんっ!」 「良いから大人しくしてて」  思いの外、真面目な声で返されて、体が固まった。 「んー、かなり痛そうだね。……ごめんね」 「……別に。悪いの俺だし」 「凄く痛むようだったら言って」  そう言って優しく下着とズボンを元の位置まで引き上げる。 「腰マッサージしてあげる」  彼は太ももに跨がったまま服越しに腰を指圧し始める。 「ん……」 「気持ちいい?」 「……うん」  昨日激しすぎたせいか凄く痛かったが、少しずつほぐれていく。こうやって正和さんに優しく労るようにされると何とも言えない気持ちになった。 「純」 「んー?」 「……遊びに行っても良いよ」 「ほんとに?」 「でも条件がある」  あまり遊びに行けないようにハードルの高い条件だったら嫌だな、なんて思いながら聞き返す。 「なに?」 「誰とどこで遊んで何時に帰るか必ず俺に言う事」 「ん、わかった」 「夕飯前に帰ってくる事」 「うん」 「俺との用事を優先させる事」 「うん」  そこまで条件を言うと俺の上から下りて隣に来る。 「守れないなら監禁するから」  なんて、冗談めかした口調で言うが、正和さんが言うと冗談には聞こえなかった。いや、もしかしたら冗談ではなく本気なのかもしれない。

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