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第241話

 リビングに入ってきた二人の近くに行って、挨拶する。 「は、初めまして。純です」 「…………」 (あ、あれ……聞こえなかった? いや、なんか急に機嫌悪くなった? どうしよう)  無言で俺のことを見てくる彼の弟に、泣きたくなる。 「芳文(よしふみ)。挨拶くらいしろよ」 「……はいはい。弟の芳文、宜しくね?」  そう言って手を差し出してくる。  普段握手なんてしないから戸惑いつつ、その手を握った。 「っ……」 (痛い……っ)  強く握られ、芳文さんの小指と薬指の爪が食い込む。痛みに慌てて離そうとしたら、今度は爪が当たらないようにぎゅっと握られた。  芳文さんの顔を見上げると、何事もなかったかのようにニコニコ微笑んでいる。 「……宜しく、お願いします」  芳文さんは手をパッと離して、再び正和さんの腕を取り、甘えたような声音で近況を語り出した。 (なんか俺、芳文さんに嫌われた?)  抓られた右手をさすりながら考えるが、会って数秒、特に嫌われるような事をした覚えがない。 「純くんもほら、座って」  由美さんに呼ばれて、空いている陸くんの隣に座る。前の席には正和さんがいて、その隣に芳文さん、彰子さんが座っている。  陸くんの隣には由美さんがいて、目の前の彰子さんと話していた。 「さ、いただきましょ」  彰子さんがそう言って、皆が今年も宜しくと言い合い、食べ始めた。  正和さんと芳文さんは仲良さそうに話し、彰子さんと由美さんも楽しくお喋りをしている。なんだか凄く疎外感を感じた。  食事中は食べる事だけに集中していたが、食べ終わって片付けも終わると、話す事もやる事もなくて困った。 (……部屋戻ろうかな)  きっといなくても問題ないだろう。  皆が帰る時に挨拶だけしよう、そう思ってリビングを出る所で声をかけられる。 「純くんって何才?」  陸くんがこちらを見上げて、首を傾げた。 「……十七だよ」 「十七才って大人? 子供?」 「んー、子供……かなあ」 「じゃあ遊ぼ!」  そう言って腕を引っ張られた。リビングを出て廊下を歩いていくので慌てて止める。 「陸くんどこ行くの?」 「んー、本がいっぱいあるんだよ」  そう言って手を引っ張って、再び歩き出すのでついていく。  陸くんが開けたのは俺も入った事のない部屋。そのままついて行くと本棚がたくさんあった。こんなにたくさん何の本が置いてあるんだろう。

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