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第248話
ぼんやり目が覚めるがまだ眠い。腕の中は温かくて心地良く、再び意識が遠のく。
「ん……にぃさん……」
「……!」
耳元で聞こえてきた声に一瞬で目が覚める。
「ちょっと、芳文さん」
「ん~……」
無理やり腕を剥がして起き上がると、一緒にくっついて寝たはずの正和さんの姿がなかった。少しして寝ぼけていた芳文さんも目を覚ます。
「あれ、兄さんは?」
いや、知らないし。そんなの俺も知りたい。
「俺も今起きたばかりなので、知りません」
大きな欠伸をしながら両手を上に伸ばす芳文さんにそう言って俺も伸びをする。
「おはよう」
横から聞こえて来た正和さんの声に振り返る。
「正和さん……おはよう」
「おはよー。もー兄さんどこ居たの?」
「純も芳文も寝相悪すぎ。朝ご飯できてるよ」
先ほどまで少し眠かったのに、そう言われてしまうと眠気は消えてお腹が空いてくる。
(もうそんな時間なんだ……)
休みが続くと段々朝に起きられなくなってしまう。本当は毎日同じ時間に起きれば良いんだろうけど、休みの日にわざわざ起きたくない。
朝食を作ってくれていたらしい正和さんは既に髭を剃っており、パジャマからラフな格好に着替えている。
「そんなに寝相悪かったかなー」
「俺が抜けたら二人ともくっついてたよ。仲悪いくせに面白すぎ」
「別に仲悪くないもん」
「はいはい。紅茶でいい?」
「ん、ミルク多めで」
リビングに行くと美味しそうなふわふわのスクランブルエッグにウインナー、簡単なサラダ、蒸かしたポテトとパンが用意されていた。
美味しそうなウインナーの匂いに食欲が増す。椅子に座ると芳文さんにはミルクたっぷりの紅茶が、俺と正和さんはいつも通り牛乳とコーヒーがそれぞれの席に置かれた。
見た目通りの美味しい朝食を食べ、片づけた後は何故か三人でソファに座って、テレビを適当に流しながら正和さんと芳文さんは話をしている。
俺は正和さんの左側にくっついて……と言うより腕を回されて捕まってしまった。
「ねえ、兄さん。土日とかもたまに来ていーい?」
「あー……いや」
「だめなの?」
「……土日は純も休みだし平日来れば?」
甘えた声で話す芳文さんに、正和さんは少し考えてから答えた。
平日の俺がいない間に来るなら良いな、なんて思ったが、そうもいかないらしい。
「平日仕事だもん」
「いやいや、いつでも休み取れるだろ」
「えー、平日休んでばかりいたら社員に良く思われないよ~」
「会議とか商談とか適当な事言っとけば?」
「僕には無理ー」
そう言って正和さんの右腕に抱き付く。なんか芳文さんが仕事してる姿とか想像つかない。
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