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第253話
暖房の効いた本館に入ると、寒くて固まっていた体の緊張がほぐれる。手を繋いだまま中を進み、大浴場に着くと、脱衣所には自分たちの他にも数人いた。
浴衣の帯をスルッと解いて籠に入れ、脱ごうとしたら視線を感じて手を止める。
「……何?」
「んー、気にしなくていーよ。脱いで脱いで」
そう言って俺のことを見ながら、正和さんも帯を解く。
気にするなと言われても、脱ぐ所をまじまじ見られて気にならないはずがない。男同士であっても恋人であれば、裸を見られる事に抵抗を感じる。
正和さんの筋肉が程よくついた綺麗な体が見えて、視線を逸らす。
「純も早く脱ぎなよ」
正和さんと反対を向いて、ささっと服を脱ぎ、腰にタオルを巻いて、俯きがちで歩いて浴室の扉を開けた。
今までプールや銭湯などに行っても何とも思わなかったが、正和さんとヤラシイ事ばかりしているせいか、他の男の裸を見るのも落ち着かない。女性の裸ほどではないが、何だかイケナイものを見ている気になる。
正和さんの場合、性の対象が完全に男だから好みのタイプがいた場合、欲情してしまったりしないのだろうか、なんて疑問がわいた。
もし俺が女湯に行ったとしたら、下半身を反応させるなと言う方が難しい。チラッと正和さんのそこに目をやると、彼はニヤニヤと厭らしい笑みを浮かべる。
「何ヤラシイ事考えてんの?」
「ち、違っ……」
慌てて顔を逸らし洗い場の椅子に座ると、隣に座った正和さんは楽しそうに目を細めて、俺に流し目を送った後、頭を洗い始める。
絶対勘違いしてる……と思ったが、話を掘り返すのも嫌なので、俺も体を洗い始めた。
大浴場で温泉に浸かった後は、ラウンジのような所でジュースを飲んで休憩し、夕飯の時間まで待つ。暖房が効いているのと温泉に入った事で、とても暑く冷たい飲み物が心地良い。
夕飯は半個室の部屋で伊勢海老や鮑、お肉、お刺身など、豪華な料理が並び、写真を撮っていたら正和さんに笑われた。
「美味しかったね」
「そうだね。純が喜んでくれて良かった」
そう言ってニコリと笑う。いつもと違い今日は朝から優しい雰囲気の正和さん。胸がドキドキして落ち着かない。
手を繋いで自分たちの泊まる離れまで歩くと、外は先程よりも寒いが、そんなに辛くは感じなかった。
部屋に入り歯磨きをして、二人でベッドに横になる。ふかふかでシーツもすべすべだし気持ち良い。正和さんの部屋のベッドよりも狭いダブルベッドのせいか、自然と体が密着する。
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