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第255話 【第6章】
冬休みはあっという間に終わり、始業式を迎えた。校長先生の長い話を聞いて課題提出し、一日が終わる。
昨日は役所に行って申請していたパスポートを受け取って来た。春休みになったらまた旅行に連れて行ってくれるらしい。とても楽しみだ。
だが、その前に考えなきゃならない事がある。
(進路、どうしよう……)
冬休みよりも前にもらっていた進路希望の紙の事をすっかり忘れていて、今週中に提出するよう言われた。今週と言っても今日が水曜日なので明後日までだ。
今日はいつもより早く帰った為、正和さんはリビングにはおらず、彼の部屋へ行く。トントン、と扉をノックすると「どうぞ」と返事があった。
「おかえり」
彼はこちらをチラッと見ながらそう言って、再びパソコンに向き合う。
「ただいま」
ベッドの端に腰掛けると正和さんに話しかけられた。
「なんかあった?」
「……進路、どうしようかなって」
そう言うと、彼のキーボードを叩く手が止まる。だが、それは一瞬で再びカチカチと音を鳴らしながら返された。
「……俺のお嫁さん?」
(お嫁さんって……)
頬が少し火照って熱い。
「そ、そうじゃなくて……仕事とか」
「……俺の稼ぎじゃ足らない?」
冗談めかしてクスリと笑い、カチッと一際大きな音を鳴らすと、キーボードから手を離してこちらを向く。
「何かしたい事とかあるの?」
「特に、ないけど……」
正和さんは軽く伸びをして、こちらに来ると俺の隣に座った。
「……んー、進学する?」
「えっ、と……」
「学費は体で払ってもらおうかな~」
悪戯な笑みを浮かべて腰を撫でさする正和さんに、体がびくりと大袈裟に揺れる。
「っ……!」
「なーんて。良いよ、純の好きにして。お金とか気にしなくて良いからさ、受験すれば?」
正和さんは真面目な口調でそう言ったが、特に行きたい大学も勉強したいと思う分野もない。
「あ、でも仕事はダメだから」
「なんで……?」
控えめに聞くと当然と言わんばかりの声で返される。
「嫌だから」
こうもきっぱり言われるとなんか納得してしまう。
「家で可愛く俺の奥さんしてて。大事にするから」
ぎゅっと抱きしめられて、ふと疑問が湧く。
「バイトも……?」
「ダメ」
「でもそのうち借金とか、返さないと……」
はあ、と大きくため息をつく正和さん。
「返すも何も夫婦なんだから一緒でしょ」
「けど……」
(いや夫婦って……)
「……じゃあ、俺の仕事手伝って」
「え……?」
「書類とかやること結構あるんだよね」
そう言った彼は「ああ、実技も兼ねて」とニヤリと笑う。
「実技……?」
「どうしたらお客が喜ぶか、色んなマニュアル作らないとね?」
ニヤニヤと厭らしい笑みを浮かべて腰に手を回してくる正和さんから、慌てて少し距離をとる。
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