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第258話
「今度持ってくるから一緒にやらない? 好きなの選んでよ」
「え、本当ですか? ……あ、でもお金とか」
「これうちの会社のだけど、どうせサンプルとしていくつか余るから大丈夫だよ。気にしないで」
そう言って電子カタログのページを捲り、数種類のフェルトがセットになったものを指差す。
「これとかどう?」
「あ、良いですね」
なんて、芳文さんと楽しく会話する。最初は嫌いだった芳文さんと、こんなに仲良くなるとは思っていなかった。
「あ、純くん髪の毛ごみついてる」
「え……?」
髪に手をやってゴミを取るように指で梳く。
「そこじゃない、もっとこっち……違う、こっち」
そう言って芳文さんは俺の髪に手を伸ばした。
「とれた。てか、ゴミじゃなくてクリームだし」
「すみません。ありがとうございます」
「もー、どうしたらこんなとこに付くのー?」
なんて言いながら、クリームのついた指をペロッと舐めた。
「そんなの舐めちゃだめですよ!」
「いいの、いいの。てか純くんの耳って形綺麗だね」
「え、そうですか?」
「うん、よく言われない?」
「いや、初めて言われました……」
色も白くて綺麗だし、と言いながら耳をツーっと指でなぞる。体がビクッと揺れてその反応を楽しむかのように何度かなぞられた。ふーっと息を吹きかけられて腰がゾクリと震える。
「びくびくしちゃって、かーわい」
彼は楽しそうにそう言って、顔を離した。
「もーやめてくださいよ、そういうの」
「あ、ここにも少しクリームついてる」
芳文さんは自分の髪を指しながらそう言う。
「え……とれました?」
「ううん、かして」
そう言って髪に手を伸ばしたかと思ったら、不意に耳を舐められる。すぐに押し返すも、抱き締められて離せなかった。そのまま舌を差し入れられて、ヌルヌルと滑る感触に背筋がゾクゾクと電気が走ったみたいに震える。
「やっ……芳文さんっ! やめて、くださっ……」
「何で? もしかして耳で感じる?」
「ち、違っ、はぁ」
ピチャピチャと厭らしい水音が鼓膜に直接響き、腰がゾクリと震えて中心が反応し始める。
(やばい……気持ちい……)
頭の中が徐々にぼやけて白くなっていく。弱い耳を執拗に責められて、微弱な快感に中心に熱が溜まり膝をこすり合わせた。
「あ、勃ってきちゃったの~? かーわい」
芳文さんは耳に息をふーっと吹きかけてゆっくり離れる。
「っぁ……なんで、こんな」
「んー、純くん可愛いからさー、軽い冗談。許して?」
(冗談って……芳文さんにとっては別に普通の事なのか……)
なんて、普段から正和さんに凄い事をされ過ぎて、何が普通なのかよく分からなくなってきた。兄である正和さんにもベッタリだし、そうなのかもしれない、と妙に納得してしまう。
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