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第259話
「次の土曜日も来ていい?」
「えっと……はい、大丈夫です」
「じゃあ、シュークリームと、この中のもいくつか持ってくるから、楽しみにしててね」
そう言ってニコリと笑う。
「でも正和さん、土曜の夕方から仕事で出ること多いから……」
「知ってるよ。でも兄さん束縛激しくて、純くん全然遊べてないでしょ?」
「あー、いや、まあそうですけど」
この間ようやく友達と遊びに行って良いと許可が下りたが、遊びに行けばおそらく機嫌が悪くなるし、気軽に遊びに行く事はできないだろう。
「だから兄さんが仕事の時くらい、好きな事して一緒に遊ぼうかなーって。どうせ泊まるから次の日兄さんにも会えるし。……あ、俺じゃ嫌?」
「そんな事! 芳文さんと話してると楽しいし、嬉しいです」
「ふふ、良かった。あ、兄さんには仲良いの黙っといてね。すぐ嫉妬するから面倒だし」
「あー、確かに」
絶対面倒くさい。二人で仲良く手芸なんてしていたら、正和さんは面白くないに決まっている。それにもし後から仲良い事が知れても、彼の弟だし問題はないだろう。
「楽しみだな~。あ、ゲームはどんなの好きなの」
「えっと、最近はスマホのアプリばっかりで……」
「何かオススメある?俺あんまやらないから疎くて……でも気になるんだよね」
あれからしばらく話して、一緒にゲームをした。久々にたくさん笑ったなあ、なんて思っていたら正和さんが帰ってくる。
チラッと時計に目を向けると時刻は、二十三時五十五分を示していた。随分と長く芳文さんと遊んでいた事になる。
「兄さんおかえりー」
語尾にハートがつきそうな甘えた口調で、正和さんの事を出迎える芳文さん。俺は少し疲れてソファに座ったまま、正和さんの方を向く。
「おかえり」
「ただいま。……芳文、お前また純に意地悪したのか?」
「えー、してないよー。ちょっと話してただけただし」
芳文さんが口を尖らせてそう答えると、正和さんは疑いの眼差しを向けたまま俺の所へ来た。
「どうしたの、純」
「ちょっと眠いだけ」
「ほらー。僕が純くんに意地悪するわけないじゃん」
「はいはい。疑って悪かったよ」
少し疲れた様子の正和さんは「シャワー浴びてくる」と言って、浴室へ向かった。
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