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第266話 (正和視点)

『正和さん嫌い』  いつもなら「怒るよ」と言えば、慌てて謝ってくるのに、今回は何が気に入らないのか言い返されてしまった。 「はぁ」  なんなんだ、いったい。  仕事を口実に零夜を呼んで愚痴る。  確かにちょっと酷く抱いたかもしれないが、今までもあったし、もっと酷くした時もあったじゃないか。本気で勉強する気でもなかったみたいだし、あそこまで怒る意味が分からない。 (どうしたら機嫌直るんだ? ……面倒くさい。あーいや、純は可愛いけど)  良い年して恋なんかするもんじゃないよなーとつくづく思う。恋愛って本当面倒くさい。監禁して快楽責めにして、はーい仲直り……で良いかな、もう。  なんて、最近はできるだけ純の考えも尊重してやろうと努力中だから、しばらくは様子見。 「お前なあ……もっと優しくしてやれよ」 「いやいや十分優しいでしょ」 「まだ高校生だろ? それもごくごく普通の。恋人同士の甘い関係を想い描いてる」 (いやー甘い関係って)  そもそも純との始まりがアレだし、それは期待してないだろ今更。 「だいたいそんな抱き方した後で起きた時そばにいなかったらだめだろ。マゾじゃないんだし」 「ドMだよ」 「いや、そうかもしれねーけど、根っからのMじゃないだろ」 (あー耳が痛い。うるさい) 「話を聞け」  ポカッと頭をはたかれて顔を顰める。痛くないけどむかつく。話を聞いてもらってただけなのに、何で俺が怒られなきゃならないんだ。 (……めんどくさい) 「愛情注いでやらねーと本当に嫌われるぞ」 「はぁ……そりゃもうたっぷり注いでるよ。純が受け取らな……っ」  受け取らないだけで、と言った言葉は途中で消える。強く叩かれた頭を押さえて零夜を睨めば、彼は冷たい目をしてニヤリと笑った。 「へえ。じゃあ同じように愛情注いでやろうか?」  あーなんかスイッチ入っちゃったよ。勘弁してくれ。 「やめろよ。気持ち悪い」  そう言った所で、ガチャッと音がしてリビングの扉が開く。 (あ、純帰ってきた。……もうそんな時間か) 「ごめんね、もうすぐ帰るから」  零夜がそう言うと、純はぺこりと頭を下げてリビングを出た。 (……可愛いなあ) 「お前のは愛情じゃなくて押し付けてるだけだろ。もっと相手の気持ち考えてやれって言ってんの」 「あー、はいはい。分かった分かった」 「分かってねーだろ」 「いや、分かったよ。ちゃんとするって」  まあとりあえず、純がどういう行動するのか見てるのもたまにはいいよね。一人で勝手に怒ってるんだって思ったら可愛く見えてくるし。

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