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第270話

「どうして?」 「俺、正和さんと付き合って……」 「知ってるよ。俺の事嫌い?」  首を傾げて聞きながら、腰をさわさわ撫でられてぶわーっと体が熱くなる。 「嫌いじゃ、ないですけど……」 「俺は純くんのこと好き」  そう言って顔を近づけてくる。 「や、やめましょう……こんなのだめですっ」  顔を逸らして手で押し返すと、芳文さんがクスッと笑う。 「ねえ、何で勃ってるの?」 「っ……」 「エッチな事考えた?」 「ち、違っ……芳文さんが、くっついて、くるから……」 「それって……俺、期待して良いのかな」  そう言ってツーッと人差し指で下腹部をなぞる。 「本当にっ……そう言うの、だめです」 「でも俺に好意がなきゃ、こうならないよね?」  ニコニコして聞いてくる芳文さん。逃れようと胸を押して立とうとするが、それぞれの手首を掴まれる。 「俺、そんなつもりじゃ……」  そのまま両手を後ろに回されて一纏めにし、片手で押さえられた。 「やめて……お願い、やめて」 「でも純くん、こうされるの嫌じゃないでしょ?」  そう言って空いてる方の手で顎を掴まれて逃げ場を失う。 「っ……んん!」  唇が触れ合って彼の舌が入ってくる。歯列をなぞられ、上顎をくすぐるように舐められれば、腰のあたりがゾクリと震えた。 「んぅ、んんっ……ん、ぁ……はぁ」  息をするのもままならない激しいキスに全身の力が抜けて、瞳は潤み体を震わせる。口腔を隈無く蹂躙した後、唇がゆっくり離れ、お互いの舌を結ぶ唾液が厭らしく光った。 「本当に嫌なら、俺の舌噛み切ってでも逃げるよね」 「だ、だって……正和さんの弟にそんな……」  彼は、ふふっと笑う。 「それだけじゃないでしょ? ここ、こんなにして」  そう言って形を変えたものを服の上から撫でる。 「やめてくださいっ……本当に、これ以上は」 「兄さんに怒られる?」  コクコクと頷いて体を捩る。 「可愛い。……やめて欲しい?」  再びコクコクと頷けば、芳文さんは悪戯っ子のような笑みを浮かべる。 「じゃあ、明日一緒に出かけてくれるならやめたげる」 「それは……正和さんに、怒られるし……」 「さっきあんな事しといて今更でしょ」  耳元で囁いてふーっと息を吹きかけられる。 「一緒に出かけるだけ。ね? 大丈夫だから」 「で、でも……俺、外出許可取らないとできないから」  なんとか逃げ道を探してそう言うが、彼はにっこり笑う。 「それなら大丈夫。俺が言うよ」 「っ……」 「そんな顔しないで。本当に純くんと出かけたいだけだから」  微笑んだ彼を探るように見る。すると、正和さんが帰宅したのか、遠くで音が聞こえドキッとする。中心は形を変えているし、芳文さんの上に乗っかって、これでは俺が言い寄ってるみたいだ。 「分かったから……おろして」 「かーわい」  チュッと音をたてて額にキスを落とすと、芳文さんは俺を床に下ろして部屋を出て行く。 (何なんだ、いったい……芳文さんが俺を好き……?)

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