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第280話

* * * 「ん~。やっぱ兄さんの作るご飯おいし~」  土曜日になり、いつものように家に来た芳文さん。正和さんは今日は仕事へ行かないらしく、三人で夕食をとる。  食べ終えた後、正和さんと芳文さんは仕事の話をリビングでし始めた。  俺は、邪魔をしたら悪いかな、と思って自室に行き、この間芳文さんに買ってもらったゲームをする。  友達の間ではモンスターを倒すやつが流行っていて、そういうのも少し興味はある。だが、区切りの良い所までやらないとやめられないので、疲れてしまいそうだしやめておいた。  お花に水をあげたり、虫を捕まえたり、魚を釣ったり、家を大きくして模様替えしたり。のんびりと生活するだけのゲームだが、楽しいし、癒される。 「……ごみか」  魚の影が大きかったから大物が釣れると思ったのに、つれたのは車のタイヤだった。 「じゅーんくんっ」 「うっ……」  ベッドでうつ伏せになってゲームをしていた俺の上に、勢いよく乗っかられて低い声が出る。 「……重い、です」  重い、苦しい。自分より大きいのだから全体重を預けるのはやめて欲しい。 「ごめんね~」  軽く謝りながら、俺の横に転がる。データをセーブして電源を切ると、芳文さんが俺の頬を人差し指でつついてきた。 「……純くんって兄さんのどこが好きなの?」 「どこって……」 (…………あれ? どこが好きなんだろう) 「……料理、上手だし」  芳文さんが吹き出して笑う。 「え、そこ? 料理って……っくく」 「そんな笑わなくても良いじゃないですか……!」 「だって……ねえ? 他は? 好きなとこ他にないの?」 「たまに優しいし……あ、本当に酷い事はしない」 「全然良いところ出てきてないんだけど……!」  そう言って、芳文さんは笑いを抑えきれないのか肩を震わす。 「えっと……一緒にいて落ち着くし、細かな気遣いできるとことか……あ、声凄く好きだよ」  正和さんの声落ち着くし、たまにゾクッとくる。  あと誰にも言わないけど、体の相性も悪くない。というか凄く気持ち良い。   ちゃんと言葉で好きだと伝えてくる所とか、記念日を大切にしている所も好き。心配したり束縛が激しい気がするけど、それも俺の事が好きだからだと思ったら、ちょっと愛しく思えるし。  いじめられるのは好きじゃないけど、ドSな正和さんにたまにキュンとしたりもする。  俺のこといつも考えてくれてて、凄く気遣ってくれたり、優しく抱きしめてくれるの結構好き。  最近、一緒にいる事に慣れてしまったけど、俺のことドキドキさせるのも上手で。とても大好きで大切な人。  こんなこと、恥ずかしいから絶対言わないけど。

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