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第282話

「芳文もシャワー浴びれば?」 「うん、そうする~」  芳文さんがお風呂へ行ったので、俺も自室を出て二人で正和さんの部屋に戻る。ベッドに入ると彼も隣に入ってきた。 「芳文と何話してたの?」  ニコニコして聞きながら、腕枕をしてくる正和さんにくっつく。 「……正和さんのどこが好きかって聞かれた」 「ふーん……なんて答えたの?」  ニヤニヤしながら顔を覗き込んでくるので口を噤む。 「じゅーん」 「別に……言うわけないじゃん、そんなの」 「へえ?」 「っ……たまに優しいとか……料理上手いとか、……他はわざわざ芳文さんに言うことじゃないし」  彼がニヤっと口角を上げるのを見て、失言したことに気付く。 「じゃあ、その『他は』俺に教えて。俺のどこが好き?」 「っ……」 「じゅーん」 「知らないし」 「ん~、言わないの?」  何か含みのある聞き方をする正和さ。こうなったら答えないわけにいかない。 「……ぜんぶ」 「全部って?」 「正和さんの、全部」 「具体的に」  ニヤニヤしながらしつこく聞いてくる正和さんに投げやりに返す。 「意地悪なとこも優しいとこも全部! 全部好き」 「最後のとこもう一回言って?」 「だから、全部す……っ」 「なーに?」  ニタァと嫌な笑みを浮かべて、言うように促す正和さんから目を逸らす。軽く深呼吸して、赤くなりかけた顔を落ち着けた。 (無心、無心。何も考えないぞ) 「……全部好きだって言ったの」 「ふーん……じゃあ正和さん大好きって言って?」  そう言って俺の唇を人差し指で撫でる。 「……正和さん大好き」 「もう一回」 「正和さん、大好き……」 「もう一回」 「正和さん……だい、すき……」  顔がカアァァ、と熱くなる。 (なんなんだ……このプレイは……)  てか絶対、俺が何も考えないようにしてるの分かっててやってるし。 「そんなに俺のこと好きなの? 可愛いね」 「っ……」  唇に軽く口付けて、赤くなった顔を覗き込むようにじっと見つめてくる。 「……正和さんも言ってよ」  仕返しのつもりでそう言ったのに。 「純のこと大好きだよ。普段の可愛い純もえっちで厭らしい純も全部好き。愛してるよ」  なんて、恥ずかしげもなく言われて顔を赤くする。結局、いつものように俺が恥ずかしくなるだけで終わった。

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