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第283話
* * *
「うー寒い」
「姫、ジャージは?」
「忘れた」
変態のせいで。来月マラソン大会がある為、体育の授業はその練習で、学校の周りを走る。だが、この時期の外は寒く、半袖短パンの体操着は直接冷たい風に当たるので辛い。
長袖のジャージが一枚あるだけで全然違うのに……と、忘れた原因の正和さんの顔を思い浮かべて腹を立てる。
学校行くまでにまだ時間があるからと盛ってきた彼から逃げるようにして家を出たので、課題のプリントも家の机の上に忘れてきた。
(……最悪)
「鳥肌たってるー」
「っ……」
笠原の指に腕をツーッとなぞられて、更に鳥肌が立つ。咄嗟に腕を払って一歩引いた。
『ねえ、純の乳首凄くない?』
『ん? あー確かに』
『シャツが……っ』
クスクス笑いながらひそひそと話をする勇樹と拓人の声が聞こえる。
「……全部聞こえてるんだけど」
「だって」
勇樹はそう切り出して、ププッと吹き出す。
「乳首勃ってるし、なんか大きくない?」
「っ……寒かったら勃つに決まってんじゃん!」
「いやー、でも大き――」
「しつこいし!」
勇樹の話を遮るように大きな声を出したが、今度は笠原が話し出す。
「まあ、あれじゃん? えっちのし過ぎで乳首吸われまくっ――」
「もー黙って! いいじゃん別に。ほっといてよ……」
(本当最悪……)
全部あの変態性欲魔人のせいだ。帰ったらただじゃおかない、なんて決意して、マラソンの練習に励んだ。
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