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第284話 (正和視点)

「だから、ごめんって」  帰ってきて早々、目をつり上げて俺の部屋に来た純。大層ご立腹の様子で、何かと思えば、俺のせいでジャージとプリントを忘れたらしい。  ジャージを忘れたせいで、寒かったのと皆に乳首を揶揄われたとかなんとか。プリントが提出できなかったから、居残りまでさせられて散々な一日だったそうだ。  そんなに乳首恥ずかしいなら絆創膏かニップレスでもつけて隠せば良いのに。 (……あ、ブラもいいな)  どうせなら女装させてお出かけするのも楽しそうだ。 「学校の日に朝からそういう事するのやめてって前も言ったよね」 「うん、ごめんね。純が可愛かったから、つい……でも時間あったし、勝手に出てったのは純だよ?」  そう、別にコトが済んでから家を出れば何ら問題がなかったはずだし、ジャージが置きっぱなしなのは知っていたから、声をかけたのに慌てて出て行ったのは純だ。  責められる謂われはないし、何度も謝っているのにいい加減しつこい。 「時間あるとかそういう問題じゃなくて!」 「……じゃあ学校から帰ってきたら毎日してくれる?」 「っ……毎日なんてするわけないじゃん」  ツン、と冷たく返されるがここばかりはオレも譲れない。 「毎日しても足りないくらいなのに、週二、三回しかしてくれないし。欲求不満なんだけど」 「は? 俺、かんけーないし」 (純ちゃんひどーい。そういう事言うんだ?) 「関係なくないでしょ。セックスレスは離婚に繋がるって何かの雑誌に載ってたよ?」 「離婚って……いや、レスじゃないし、そもそも週二、三回してたら十分だと思うけど……」  そう言って俯く純の頬を撫で、俺の方に向かせる。 「純はすぐイっちゃうから十分かもしれないけど、俺は足りない」 「っ……」 「平日は優しくするよ。それなら良いでしょ?」  そう言えばそのまま頷くと思ったのに。珍しく俺に抵抗してくる。 「……良くないし。やだよ」 「んー、純は強引に襲われた方が燃えるの?」 「っ……そんなわけっ、馬鹿じゃないの!?」  そう言って可愛い目で睨んでくる。 (純ちゃんコワーイ)  なんて、睨んでるつもりなんだろうけど上目遣いだし、凄い可愛い。 (あーでも今、馬鹿って言ったよね? それはよくないなあ) 「ふーん?」 「……何?」 「俺に馬鹿とか言うんだ?」 「だって……正和さんが悪いし」 (あーお仕置きしたいなー)  でも今日の純は凄く機嫌悪いから、後々面倒になりそうだ。 (んー……)  俺も純も黙ってしまって、エアコンの風の音がやけに大きく感じられる。しばらく沈黙が続いて、先に話を切りだしたのは純だった。 「……馬鹿って言って……ごめんなさい」  どうしようか考えていたのに、小さな声で謝り出す純。 「んー?」 (どうしたの、突然) 「でも……その、毎日は辛いし、……週四か五くらいで勘弁してください……」  俺の首もとを見ながら、ぽつりぽつりと話す。  純は左手で反対の二の腕辺りをぎゅっと握った。これは頼み事や言い訳をする時に純がよくやる仕草だ。 (あー可愛い純に戻った)  口元が緩んでニヤニヤとしてしまうのを抑えられない。今すぐくっつきたい。 「だめ」 「っ、そんな……」 「んー、でも純も積極的にしてくれるなら、週四で我慢してあげる」

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