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第291話

「っ……純くん」 「あっ、ぁ……っはぁ、あぁん」  追い上げるように腰の動きを早め、扱く手にクッと力を入れられて、絶頂を迎えた。イった後も芳文さんは抽挿を繰り返し、敏感になった体はビクビクと震える。 「あっ、あぁ」  彼は呼吸が少し荒くなり、眉を顰める。  啄むようなキスを落として「大好きだよ」と囁いて。グッと腰を引いて、俺の腹部に白濁液を放った。  お互い息を切らして、荒くなった呼吸をゆっくりと整える。次第に霞がかっていた頭もクリアになって。 「……ぁ」 (芳文、さんと……。やばい、どうしよう。どうしよう、どうしよう、どうしよう。セックス、しちゃった……)  心臓がドキドキして、サーッと血の気が引いていく。固まっていると、チュッ、と唇にキスされて。首下と膝裏に手を入れられて、そのまま横抱きにされた。 「お、おろしてください……」  声が震える。 「シャワー浴びにいこ?」 「俺……俺……」  芳文さんは『いい』と言うまでは入れてこなかった。縛られはしたけど、抵抗したら押さえられたけど、優しく、優しく、丁寧に。完全に無理矢理と言う訳でもない。半ば合意したも同然だった。 (……どう、しよう) 「……大好きだよ」  芳文さんは、俺の事を抱えたまま浴室に向かって歩き、そっと額にキスを落とす。浴室に着くと下ろされて、芳文さんも服を全部脱いだ。  頭の中が混乱していて、彼にされるがまま体を洗われる。よく分からないまま、お風呂を出て服を着せられて。芳文さんの裸体が目に付き、困惑する。 (ほんとに……しちゃったんだ……) 「……どうしよう」 (こんなの正和さんに知れたら……殺される)  いや、さすがに殺されはしないだろうけど絶対やばい。 「今まで通り黙ってれば大丈夫。純くんが言わなきゃ分かんないよ」  服を着ながら、優しい声でそう言って。手を引かれて歩き、リビングのソファに座るよう促される。 「待ってて。純くんの好きなココア入れてあげる」  芳文さんは俺の頭を撫でて、キッチンへと足を向けた。カチャカチャと食器同士が触れる音がする。 (正和さんにバレたら……どうなる?)  ただのお仕置きで済むはずがないのは確かで。日頃から浮気したら許さないと言っている彼。他に関しては、これをしたらお仕置き、次やったらこういう罰、と言っていた。だが、これらは許さないとまでは言われていない。 (浮気の場合は? 許してもらえなかったらどうなるんだ?) 「はっ……っ、はぁ……」 (黙ってれば、大丈夫……? 正和さんに隠し続けるの? この先、ずっと?)  なんだかクラクラする。心臓がうるさいくらいバクバク鳴って、指先もわずかに震えて、感覚が鈍くなる。息が苦しい。吸っても吸っても酸素が入ってこない気がして、胸をぎゅっと押さえる。

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