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第317話

* * * 「や……兄さん嘘でしょ……」  仰向けで両手をベッドヘッドに縛り付けられ、下着ごとズボンを脱がされた芳文さんは、目を見開いたまま固まった。正和さんの一連の動作を見ていた俺もベッドの前で立ち竦む。 「純、おいで」 「そんな……できない……」  異様な光景にゾクッと背筋を震わせ、見ていられなくて後ずさる。 「やるんだよ。なんでもするって言ったでしょ?」 「兄さんごめんっ! こんなつもりじゃ……」 「じゃあ、どういうつもり? 軽い気持ちでヤったわけ?」 「違っ、そうじゃなくて…………許して、兄さん」  芳文さんは「ごめんなさい」と何度も謝っているが、それくらいで許してもらえるはずがないことは、俺も芳文さんもわかっていた。焦っている芳文さんは、謝罪の言葉を述べながら、どうしたらいいか考えている様子だ。 「純。早くおいで」 「っ……」  少し低めの声でハッキリと俺の名を呼んだ後、優しく微笑んで手招きする。それに逆らえなくて、誘われるように足を踏み出した。  ベッドに上がって、芳文さんの足元――正和さんの前でぺたりと座れば、頭を優しく撫でてくれる。キングサイズの広いベッドは三人で乗っても余裕があるが、何でもできそうなその広さは却って不安を煽られる。 「純くんが……他の人としてもいいの?」 「……既にしてるんだから今更でしょ。それに今の芳文はただの玩具だから問題ないよ」  そう言うと、朝起きた時のまま着替えていない俺のパジャマにそっと触れた。ゆっくりとボタンを外しながら、言葉を続ける。 「それに、SMってこういうのもあるんだよ。俺は好みじゃなかったけど……どうせコソコソやられるくらいなら、プレイとして楽しんだ方が良いよね」  そう言ってニヤリと笑い、ボタンを外し終えたそれを腕からするりと抜いて、ベッドの端に置く。パジャマの下に着ていたシャツも脱がされて、肌が露わになった。 「はぁっ……正和、さん……」 「効きすぎちゃったかな? ガチガチだね」  そう言って、膨らんだ中心部をズボンの上から撫でた。敏感になった体は僅かな刺激でも、電気が走ったようにビリビリする。 「純、下も脱いで」  ズボンと下着も脱ぐよう優しく言うが、脱いだらどうなるのか、この後の事を考えると怖くて脱げない。 「……純。なんでもする約束だよね」  スッと目を細めて、彼の声が冷ややかなものへと変わった。 「っ……」  俺はこの声を聞くと、背筋がゾクっとして落ち着かなくなる。彼がこんな風に冷たい声で言った後は、決まってお仕置きをされるから、体が覚えているのかもしれない。  唇をぎゅっと噛んで、震える手で下着ごとズボンを下ろす。そうすれば、彼はニコリと笑って優しく頭を撫でてくれた。いつも以上に優しい仕草をする正和さんが何を考えているのかわからなくて、悪寒が走る。 「ハジメテは可愛い女の子が良かったんだっけ」 「え……」

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