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第319話

「ほら、これ使ってあげて」  彼はサイドテーブルの引き出しから、ローションの入ったボトルを取り出すと、渡してくる。躊躇いつつ、それを受け取って、キャップをゆっくりと回す。  その間に気持ちを落ち着けようと、意識して心を無にすれば、嫌な気持ちは次第に薄れた。代わりに、媚薬で高ぶった自身に意識がいって、出したい衝動に駆られる。  荒くなった息を抑えるように大きく深呼吸してキャップをベッドの上に置き、ボトルを傾けて芳文さんの蕾に直接垂らせば、冷たかったのか体をぴくんと跳ねさせた。とろっとした液体は、肌を伝ってシーツを濡らす。 「っ……純くん」  目を瞑って中指をクッと押し込めば、吸い込まれるように、意外とすんなり入っていく。  しかし、自分のを数回弄った程度で、経験なんてない俺にはどうしたらいいか分からなかった。いつも正和さんにしてもらうようにやってみるが、今一うまくできない。 「んっ、やだ、抜いて……ぬいて、っ」  嫌がる芳文さんに心をかき乱されて、手の動きが止まる。どうしたら良いかわからなくて、唇をぎゅっと噛んで、眉間に皺を寄せた。  指を抜こうとすれば、後ろから正和さんがピタッとくっついて楽しげに言う。 「手伝ってあげる」 「こうだよ」と俺の指に添えて、二本の指を入れる。俺の指と合わせると三本。ローションの滑りを借りて、難なく入るが、芳文さんは苦痛に顔を歪めた。 「いっ、た……うぅ」  正和さんは、狭い芳文さんの中を俺の指の上から、荒々しく掻き回す。目をクッと閉じた芳文さんが辛そうで、見てられなくて俺も再び目を瞑った。  しかし、視界が遮断されると、音や感触がよりリアルに伝わってきて、生々しさに耐えきれずすぐにまた目を開ける。 「やっ、ぅ、はぁ……にぃ、さっ……」  手を握り締め、唇を噛んで痛みに耐える芳文さんが、本当に可哀想で見てられない。無理やり入れられる痛みは自分も経験があるから、尚の事つらかった。 「やめよ……も、こんな」 「純」  思わず口にしてしまった言葉を咎めるように名を呼ばれ、ハッとする。 「にぃさっ、ゆるして……すみませ、でしたっ……にどと、しないから、っ……許し、っ」 「許してほしいなら、黙って受け入れなよ」  そう言って正和さんが探るように指を動かし、俺の指越しに少しだけ感触の違う所に触れた。 「っ! ……んっ、っ、っ……だめっ、そこ……はぅ」  そこを押すようにグリグリと撫でれば芳文さんの声が甘くなる。 「ほらココ。これが芳文のイイとこ」 「やっ、純く……あっぁ」  痛いだけでは可哀想で、教えてもらった場所を優しく撫でれば、正和さんは指を抜いて俺から離れる。そのことに少しだけ不安になるが、「続けて」と優しく言われて、彼の言う通りにした。

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