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第327話

「純。ご飯できたよ」  正和さんの声に、パチリと目を開けると優しく微笑んだ彼と視線が絡んだ。 「お昼はオムライスだよ。早く下りてきてね」  そう言って部屋を出て行った正和さんを目で追った後、体を起こす。しかし、そのまま布団を出ようとして目にしたものに驚き、一瞬動きを止めた。 「っ……」 (毛が……ない)  下腹部に視線を落としたら、下の毛が綺麗に剃られてなくなっていた。これもお仕置きなのだろうか。もし友人に見られたら恥ずかしいし、からかわれるだろうな、なんて思いながら布団を抜け出す。 (まぁ、見られることなんて、なかなかないけど)  部屋を出てダイニングに行くと、テーブルには美味しそうなオムライスとサラダ、スープが並べられていた。彼の作るオムライスは大好物なので嬉しい。  向かい合って座り、他愛ない話をしながら食べる。 「美味しい?」 「うん」 「よかった。午後は散歩しようか」 『散歩』と聞いて、嫌な予感に胸がドキッと一際大きく脈打つ。そして、思った通りその予感は的中した。 「首輪と同じ赤いリードつけてあげる」 (……この格好で?)  だが、今の俺には拒否権なんてなくて、嫌だと言うことはできなかった。食事を終えて、彼の歯磨きが終わるのを、ドキドキしながらリビングで待つ。彼が戻ってくると早速出かけるかと思いきや、ソファに手招きされた。 「おいで」  何をするのか不安に思いながら彼のもとへ行けば、ソファに腰掛けた彼は膝の上をぽんぽんと叩いて座るよう促す。しかし、本当に座っていいのか分からなくて、眉をハの字に下げて彼を見る。 「どうしたの」  そう言って、再びぽんぽんと叩いた彼の膝の上に、ちょこんと座って、促されるまま彼の胸に背を預けた。彼は俺の伸びた髪の毛を指先でくるくると弄びながら、問いかける。 「純はさー、俺のこと好き?」 「っ、す……すき」 「ほんとに?」 「本当だよ! 正和さ……まのこと、大好き、です」  言葉の途中で先ほどの『ミス』を思い出して、少し吃りながら彼に伝えたら、頭を優しく撫でられた。その手はするりと下に伸び、姿勢をくるりと反転させられる。  正和さんと向き合う形になって、気恥ずかしさから視線を逸らすが、俺の目は彼の手に握られた直径五センチ程のボールを見つけて釘付けなった。しかし、彼はそれを隠すようにソファと背中の間に忍ばせて、俺の腰に手を回す。 「じゃあ、ここにピアスつけても良い?」 「え……」  ここ、と指差した場所は、先ほど散々苛められた俺の中心部で。鈴口を指先でそっと撫でられれば、声が震えて涙がじわりと浮かんでくる。 (そんな……)  ピアスということは、当然そこに穴をあけるわけで、そんなの絶対痛いに決まっている。

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