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第328話

「……なんてね。冗談だよ、そんな顔しないで?」  そう言って、俺の眉間を指先でツンっと押した彼は嘲笑を浮かべていた。初めて見る彼の表情に戸惑いつつ、ひどく罪悪感を覚えて、いたたまれなくなる。 「ごめん、なさい」  だが、小さな声で謝った俺の言葉は無視するかのように、新たな問いを投げかけられた。 「……芳文と色々作ってたけど何かあげたの?」 「えっ、と……」 (どうしよう、また怒られる……?)  そう思ったら怖くて指先が震えるが、嘘をついてバレた時の方が怖くて、正直に告げる事にする。 「ぬいぐるみと……ネックレスを一緒に作って、あげました」 「――――」 「でも、えっと、深い意味はなくて……その時はまだ」  彼の沈黙が恐ろしくて、言い訳するように当時の心境を述べるが、それも彼の言葉によって遮られてしまう。 「ブレスレットも作れる?」 「え……ブレス、レット? でも」 「嫌なの?」  そう言って、彼は目をスーッと細めて首を傾げた。 「そんなこと! でも俺、そんな大したの作れないし……」 「純が作ったやつ欲しいな~」  俺の腰を引き寄せて、甘えるように見上げる彼は少し子供っぽい。 「……わかった」 「二つ作ってね」 「ふたつ?」  何故、と不思議に思って聞き返せば、彼は当然だと言うように返す。 「純とお揃い」  彼は、はぁと小さくため息をついて、拗ねたように俺の胸へ顔を埋めた。そんな彼の髪の毛をじーっと見ながら、控えめに話しかける。 「色は……」 「んー、紺とか? 落ち着いた色がいいな。必要な物あったら言ってくれれば用意するよ」 「材料は……たぶん大丈夫」  彼は「そう」と小さく返事をすると、顔を上げて流れるような動作で前髪をかき上げた。 「そろそろ散歩に行こうか」  そう言って、俺を膝の上から床に下ろすと、彼も立ち上がる。 「後ろ向いて四つん這いになって」 「っ……」  一瞬躊躇ったが、正和さんの声がピリリとしたものへ変わった事に気づいた俺は、素直に後ろを向く。指示に従って絨毯に手をつけば、彼は蕾に指を一本入れて広げるように下に押した。その後すぐに、先ほど見たボールを中に押し込まれる。続いて、毛のなくなった股間を撫でられれば、そこはいつも以上に敏感で、ゾクリと甘く痺れた。 「っ、ぁ……なんか、揺れて……」 「ローションボールだよ。中に媚薬入りのローションが入ってて熱で溶けるんだ。面白いでしょ?」  彼は俺の首輪にリードをつけると、リードの先を握って歩き出す。首輪がクイッと引っぱられて、手を前についた。 「純はそのまま歩こうね」  そう言って玄関の方へ歩いて行く彼を追って、俺も四つん這いのままついていく。この格好でどこまで行くつもりなのだろう。敷地外のすぐ脇の道路は、同じ高校の学生がよく通る。もし、こんな姿を見られでもしたら、明日から学校へ行けなくなる。

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