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第331話
「ああ、ボール溶けちゃった? 寒いのに……やらしいことでも考えてたの?」
煽るような言葉に頬がカアアっと赤く染まり、中のローションがとぷりと溢れ出す。太ももを伝って垂れていく感触に身震いして、脚をもじもじ擦り合わせれば、彼は濡れた蕾をゆっくり指でなぞった。
「ぁ、ぅぅ」
「こんなに濡らして、ヒクヒクさせて……ほんとやらしいね」
そう言って人差し指をつぷんと浅く入れると、引っ掻くように指を曲げて、中をくるりとなぞる。
「あっぁっ」
奥が期待にきゅん、と疼いて震えるのに、彼は浅いところを軽く撫でただけで指を抜いた。
「帰ったらお風呂入ろうか」
リードを握って先を歩く彼の後ろをついていく。寒さでじんじんと痛む耳と鼻先、感覚のなくなり始めた指先に違和感を覚えるが、耐えながら頑張って歩いた。早く部屋に入って暖まりたい。
「……純」
(え……?)
突然名を呼ばれて疑問に思いながら顔を上げると、彼は少し屈んで両腕を広げていた。
「おいで。疲れちゃった?」
歩くペースが落ちていたのを見兼ねたのだろうか。正和さんは優しく微笑んで「早く」と手招きする。彼の胸にそっと掴まれば、そのまま横抱きにされて彼の歩みに合わせて体が揺れた。
そんな彼は散歩前より幾分かご機嫌で、いつものように優しい。どうしてだか分からないけれど、涙がポロリと零れて、次々と溢れ出す。
彼は無視するわけでもなく、声をかけるわけでもなく、玄関の前に下ろすと頭をポンポンと軽く撫でて中に入った。
家に入って靴を脱いた正和さんは、予め用意しておいたのか、タオルを手に取り、俺の足や手についた土を拭き払う。そして、再び抱き上げられて、浴室に連れて行かれた。室内は暖かくて、温度差のせいか、体がじんじんぴりぴりして少しむず痒い。ローションに含まれる媚薬のせいなのか、体の奥もじんわり熱くなる。
彼はどこからか小さな鍵を取り出すと、それを首輪についた錠に差し込んだ。作業の邪魔にならないように少しだけ顔を上げて、浴室の天井をぼーっと見つめる。少しして首輪が外れると、彼はそれを脱衣所に置きに行った。その後ろ姿を目で追って戻ってくるのを待つ。
しばらくして戻ってきた彼は服を脱いでいて、近くまで来ると逞しい裸体が視界に広がり、気恥ずかしくなって目を逸らした。
「熱かったら言ってね」
そう言ってシャワーを出した後、彼は湯の温度を下げて、手で確認してから俺の足元にかける。
「大丈夫?」
こくりと頷くと、慣らすように下から上にゆっくりシャワーをかけて、土で汚れた体を洗い流した。
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