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第332話

 次第に全身がカアーッと熱くなって温まってくると、鈍かった感覚も戻ってきて、後孔の違和感に身震いする。もうボールは入っていないのに、媚薬入りローションのせいか、奥が疼いて落ち着かない。  シャワーで軽く流された後は、椅子に座らせられて頭と背中を洗われる。俺のことを洗う正和さんの手付きは至って普通なのに、体は勝手に快楽だと認識して、口からは甘い吐息が零れた。 「俺も洗いたいから、後は自分でやって」  頭を流し始めた彼の裸体を見ながら、ボディソープのポンプを押す。 「っ……はぁ」  自分で洗っていても、滑りの良い泡の感触にゾクゾクして、刺激にならないようゆっくり洗った。体を洗い終える頃には、正和さんも洗い終わっていて、流した後、一緒に湯船に浸かる。 「もっとこっちおいで」  手招きされて彼の膝の上に座れば、彼の男根が臀部に触れて思わず腰を浮かせる。しかし、彼の腕が腰に回されていたものだから、ピクリと動いただけだった。触って欲しくて疼く蕾に彼の物が触れていたら、否が応でも意識してしまう。 「ぁっ、やっ」  そして、彼の手がお腹の上をするりと滑って胸の尖端を捉えた。指先でクニクニと弄られたら、たまらず声を漏らしてイヤイヤと(かぶり)を振る。  だが、彼は呆気なく手を離して再び腰に腕を回した。息が上がってどうしようもなく疼くのに、焦らすような事をされたらたまらない。 「はぁ……っ」 「のぼせちゃった?」  首をふるふると横に振って否定すれば、クスリと笑った彼の吐息が耳元にかかってぞくりと震える。 「夕飯何がいい?」 「なんでも……」 「じゃあ、外食にしようか」 「え……?」 「うん?」  何かを閃いたように言う彼に、不安になって思わず声を漏らせば、不思議そうに聞き返された。 「外、で……」 「うん、外で。ちゃんと服も着せてあげるし、ご飯食べに行くだけだよ」  そう言ってクスクス笑う彼の様子は普通で、何かを企んでいるようには見えない。外でまた変な事をするのではないかと心配したが、どうやら杞憂だったようだ。 「そろそろ出ようか」  お風呂を出た後は彼に体を拭かれて、髪を乾かした後、再び鍵付きの首輪を付けられる。その動作はとても優しい。それなのに凄く嫌なのは、自分が性奴隷という立場だからだろうか。  どうしたら恋人に戻れるのだろう。  どこまでしたら彼は許してくれるのだろう。 「夕飯まで、こもって良い?」 「うん。……俺も自分の部屋行ってるね」  仕事をする為、部屋に籠もった正和さんを見送って、自分も部屋に入った。媚薬ローションのせいか、体に熱がこもった感じがして、落ち着かない。何か気を紛らわすような事を……と考えて、昼間の話を思い出す。 (あ、ブレスレット)  材料の入ったケースを棚から取り出して、正和さんの言っていた色の紐を手に取った。  だが、材料を並べて作業しようとすると、あることを思い出して手を止める。 (芳文さんと買いに行ったやつ使ったら……まずい?) 「……やっぱやめよ」  必要な物があれば揃えると言っていたから、素直に彼に甘えた方が良いだろう。

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