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第333話
材料を片付けてベッドに横になると、自然と眠気が訪れる。しかし、正和さんが来た時に寝ていたら良くない気がして、ゴロゴロしながらスマホを弄った。
『浮気 許してほしい』と今の気持ちで検索してみれば、いくつか質問サイトが表示される。一番上のサイトをタップして質問内容に軽く目を通した後、解答欄に目を移して息を詰めた。
「っ……」
もう触られたくない、信頼できない、離婚されても当然な最低なこと、一緒にいてもらえるだけありがたい……など、浮気された側からの回答は辛辣だった。その中でも一番、目に付いたのは『信じたくても信じられなくなる』と言う言葉。それは正和さんも似たような事を言っていた。
どうすれば信頼を取り戻すことができるのだろう。以前のように恋人として楽しく過ごすことは最早できないのだろうか。
どうしたら彼を安心させられるのか考えてみても答えは出ない。
(……もう、戻れないのかな)
「純、ちょっといい?」
コンコン、と部屋の扉をノックする音が響いて、スマホの画面をパッと消す。
「はい!」
慌ててベッドから降りて扉を開ければ、彼は少し怒った顔をしていて背筋が凍る。また何か悪い事をしただろうかと考えたところで、彼が手にしている物に気づいて青ざめた。
「これは何」
「っ、えっと……芳文さんのマフラー、です」
「芳文のが何でクローゼットにかかってんの?」
普段芳文さんが家に来たときは、玄関のコート掛けにかけるから、部屋のクローゼットに置き忘れる事はない。それなのに、なぜ俺の使っているクローゼットに入っているのかと咎めているのだろう。
「先週食事に行ったとき、貸してくれて……それで、返すの忘れちゃって……」
「ふーん」
「……あの」
「じゃあ芳文に送っとくね」
彼はそう言って廊下を歩いていった。先程まで少し機嫌が良くなっていた彼が、再び不機嫌になってしまって、しゅんとする。
「はぁ……」
ため息をついてしょんぼりしながら扉を閉める。あの様子では、これからも些細な事で色々と言われるに違いない。ひょっとしたら、学校に行ってる間の友達との会話ですら疑われるかもしれない。そう思ったら凄い憂鬱な気分になった。
夕食までの間、どうしたら許してもらえるのかスマホで調べたり、考えたりしていたらあっという間に二時間が経つ。
「そろそろ出るからおいで」
そう言った彼の手には銀色の器具が握られていて、嫌な予感に目を見開く。
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