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第334話

「それ、は……」 「尿道リングプラグ。純のここにつけるから座って」 「さっき、何もしないって」 「気が変わった。早くしてね」  椅子の前に移動した正和さんの後を追って、指示通り椅子に腰掛ければ、彼は俺の前でしゃがんだ。自身を掴まれて体がピクリと震える。亀頭を中心にゼリーのようなものを塗って、鈴口に棒をぴとりと当てられれば、不安で体が強張った。 「っ……痛い?」 「……さあ」  そのまま押し込まれ、冷たい棒がゆっくりと中に入ってくる。 「ぁ、ぅ……」  二カ所程くびれのついたその棒は凹凸のないものと比べると、とても刺激的で思わず腰を引いた。痛みはないが、奥に進むにつれ体がびくん、びくん、と震える。  やがて全部が収まり、棒の先に繋がっているリングをゼリーの滑りで押し込んで、カリ首に取り付けた。亀頭よりやや小さめのリングは、簡単には外れそうもなく、もし興奮して形を変えてしまったら、外すことはできなくなるだろうし、痛いだろう事は容易に想像できた。 「おいで」  そう言って歩いて行ってしまう彼に、まさか服を着せてもらえないのでは……と不安を覚えるが、玄関で下着とシャツを渡された。それらを身に付けた後、パンツとニットも受け取り、順番に着こんで靴を履く。  玄関を出た彼の後をついていけば、ひんやりとした冷たい風が体を取り巻いて身震いする。とはいえ、予めエンジンをかけておいたのか、車内は暖かく、シートヒーターのおかげで座席からもじんわりと熱が伝わってくる。 (どこ行くんだろう)  しばらく車を走らせて、見覚えのある道を通って、駐車場に車を停める。着いたのは、正和さんと出会ったばかりの頃に一度来た日本料理店だった。 「いらっしゃいませ。……あら、ご無沙汰しております」 「サエさんの顔が見たくなって来ちゃった」 「まあ」  そう言って、彼女は上品な笑みを零す。正和さんは軽く会話を交わしながら、俺の手を握って指でスッと手の甲を撫でた。その仕草にぞくりと体を震わせて俯く。 (っ……) 「席空いてる?」 「いつものお席でよろしいですか? ご案内致しますね」  靴を脱いで廊下を歩き、一番奥の個室に通される。彼の隣に座るよう促されて座布団に正座した。 「何がいい?」  彼がメニュー表を開いて見せてくれたので、ぱらぱらとページを捲って、どれにしようか考える。あまり食欲はないけれど、鰻重も美味しそうだし、刺身と天ぷらの定食も美味しそうだ。 「……これにする」 「海鮮丼? 飲み物は?」 「えっと……オレンジジュース」  彼は呼び鈴を鳴らして店員を呼ぶと、注文を告げる。注文内容を復唱した店員がぺこりと頭を下げて、障子戸をパタンと閉めて出ていった。

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