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第349話

「へえ?」  途端に彼の声音が冷たくなって、びくりと肩を揺らす。 「っ……おれ、おれ」 「もう耐えられなくなった?」 「そうじゃ、なくて……っ」 「じゃあ何?」 「あの、罰は受けるから……せ、性奴隷と、扱いは同じでいいから……でも恋人に、してください」  少しの間が空いた後、彼は探るような目でこちらをじっと見つめる。 「……なに考えてるの?」 「っ……お願い、します」 「……まあ、いいや。恋人でも良いけど、今よりもっと酷いことするよ」 『いいの?』と問うように首を傾げて、眉を少し上げた。  酷いこととは、どんなことをするんだろうか。痛い事? それとも今度は裸で敷地外に出たりするんだろうか。もしくは、部屋にあった本物の三角木馬を使うのだろうか。想像がつかない。  それでも性奴隷という不安定な立場よりきっとマシだ。恋人であればなんでもできる気がする。  こくりと頷けば、彼はすーっと細めた目で、俺の瞳をじっと見ながら、下方を指差す。 「じゃあ、やっぱりピアスつけようか」 「え……」  ここ、と指差した場所は俺の股間で、声が震えて涙がじわりと浮かんでくる。心臓がどくんと脈打って、見開いた瞳から涙がぽろりと零れた。  そんな所に穴をあけるなんて、きっと死ぬほど痛いだろう。簡単に頷く事はできなかった。 「そ、れって……麻酔とか……」 「んー? そんなの使わないよ」  唇をぎゅっと噛んで考える。 「やめとく?」 「……つけ、る……それ、つけたら……」 「うん。ちゃんとつけられたら恋人に戻ろうか」  怖い。本当は凄く怖い。でも恋人に戻れるのだと思ったら、なんとか耐えられる気がした。 「おいで。……ほら、これ。綺麗でしょ? 純の為に作ってもらったんだ」  そう言ってトレイに乗せられたのは、円の一カ所を切り抜いたようなCカーブを描いた銀色の棒で、両端には丸いキャッチがついている。それぞれのキャッチには黄緑色とオレンジ色っぽい石が埋め込まれていた。 「純と俺の誕生石を入れたんだ」  目を細めて楽しげに話しているが、思ったより太くて涙がポロポロ零れる。  彼はピアスのキャッチを外すと、袋から針を出して、ジェルと短い管のような物を渡してくる。しかし、ピアスホールなんてあけたことがないので、使い方すらわからない。 「どうやって……」 「ここから通すのが一番楽だよ。まずはこれ塗って、ここにこれ入れてごらん」

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