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第352話

「……正和さん」 「ん~?」 「なんか、へん」 「何が?」  暗闇の中で正和さんがじっとこちらを見ているのがわかって、顔を上げる。 「ピアス、つけたとこが……なんか」 「……痛い?」 「痛くはないけど、なんか、むずむずして……」 「ああ。……シたい?」  耳元で誘うように言われて、腰骨の奥がゾクリと震える。熱い吐息を零して膝を擦り合わせれば、彼はクスッと笑って額にキスを落とした。 「でも我慢。ピアスホールが安定するまではダメだよ」 「っ、そんな……」 「純だって痛い思いしたくないでしょ? ……我慢、できるよね」  そんな風に優しい声で強く言われてしまったら、頷くほかない。  正和さんはそのまますぐに眠りについてしまって、俺は彼の腕の中で悶々と熱を膨れさせた。  何も考えないように意識はするが、それでも寝付けなくて、脚をもじもじさせながら、下方に手を伸ばす。指で少し押さえるだけでもむず痒さがなくなる気がして、そこに触れようとしたのだ。  だが、まだ感覚が掴めていなくて、思いっきりピアスに指を引っかけてしまう。 「ひっ……!」  痛すぎて、思わず体を丸めて蹲れば、寝ていた正和さんが気だるげに声を漏らした。 「ん~……どうしたー」 「な、なんでも、ない」  しばらくして痛みは落ち着くが、じんじんとした微弱な痛みはその後も続いた。だが、むず痒い感じよりはこれくらいの痛みの方が我慢できるので、結果的には良かったのかもしれない。  それでも引っかけてしまった時の痛みは半端じゃないので、次からその辺りに触れる時は、慎重にしようと決めて眠りについた。

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