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第362話
「っ、俺はどっちでも……っ」
「嫌じゃないんだ? じゃあフレームはこれでいい?」
いつの間にカタログを見ていたのか、落ち着いた色の写真を指す。デザインも凝っていて、先ほど例に上げたものよりもお洒落だ。
「……うん」
「マットレスはどれにする?」
「どれがいいんだろう……」
目の前にある二つのマットレスの説明書を見比べるが今一ピンとこない。素材や作り方が違うらしいが実際寝てみたらどういう違いがあるのだろう。
「ほら、転がってみなよ」
「いいの?」
「うん」
靴を脱いでそっと寝てみると、見た目通り柔らかく、体が包まれるように沈んで心地いい。しかし、最初はいいが、ずっと寝ていたら柔らかすぎて疲れそうな気がした。
「どう?」
「うーん、悪くはないけど……俺はあんま好きじゃないかも」
「じゃあ、あっちは? あれとか良さそうだよ」
そう言って、かなり厚めのマットレスの方へ歩いて行くと、そこにあるいくつかの展示品を彼も試す。
俺も色々なマットレスを試してみて、素材による柔らかさの違いや安定感の違いがあるのはわかった。だが、どれが良いのか選べない。
(今までのはどんなのだっけ?)
そう思いながら隣のマットレスに移って仰向けで転がる。
(あ……これ、寝心地いい)
「これがいい……かも」
ふかふかだけど柔らかすぎず、体に吸い尽くような心地よさ。体をしっかり包み込むような安定感もあって、なんだか眠くなってくる。このベッドで寝たら、ぐっすり眠れそうだ。
「さすが純くん、お目が高い」
ニヤニヤする彼につられて足元の値札を見れば、予想外の金額に驚いて目を丸くする。
「え……よんひゃく、はちじゅ」
「違う。俺たちが買うのはその下のサイズ」
(ご、ごひゃくにじゅうまんえん……!)
五二〇万円プラス消費税と書かれたそれを見て、桁を間違えてるのではないかと目を擦る。
「や、やっぱ違うのでも……」
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