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第367話

「純は船って大丈夫?」 「船?」 「うん、今イルミネーション綺麗だし、そっち方面見に行った後、船で夜景でも見ながら食事するのもいいかなって。酔ったりするタイプ?」  そう言いながら、正和さんもロールケーキを切り分けて口に運ぶ。 「面白そう。でも船とか乗ったことない」  乗り物酔いはほとんどしないほうだけど、船はどうなんだろう。凄く楽しそうだから行ってみたい。 「まあ、そんな揺れるやつじゃないからね。行く?」 「うん! あれ……でも日曜だし、今から予約とれるの?」  今日は休日で、おまけに昨日はバレンタインデーだったから、そういうものの予約は既に埋まっていそうだ。だが、彼はパクリとロールケーキを口に運んで当然のように言う。 「もう予約してあるよ」 「え、いつしたの」 「純がピアスつけた日?」  自分のあそこについているそれを思い浮かべて、顔がカァーッと熱くなる。ピアスをつけた日ということは、デートの約束をしたあと、すぐに予約したのだろうか。もし、俺が乗らないと言ったらどうするつもりだったのだろう。そんなことを思って、ぼーっとしながらロールケーキを頬張る。 「……クリームついてる」 「え、どこ」 「ここ。どうしたらそんなとこにつくの?」  彼は自分の鼻を指差した後、クスクス笑った。本当にどうしたらこんなとこにつくんだろう。赤くなった顔を隠すように、おしぼりで鼻と口押さえて下を向く。すると、今度はロールケーキが手に触れて、小指にクリームがついた。

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