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第370話
「うん、そうする」
「じゃあ、純が免許とったら隣乗せてもらおうかな」
正和さんは楽しそうに目を細めて、握っていた俺の手を撫でた。指の腹でスリスリ撫でられると、ゾクッとして変な気分になってくる。
気を紛らわそうと窓の外を眺めれば、ライトアップされた街路樹がキラキラ輝いていて目を奪われた。
「わあ、綺麗~」
それはまるで木に宝石が実っているかのようで、とっても綺麗だ。スマホで何枚か写真を撮っていたら、正和さんがクスッと笑う。
「もう少し行ったとこ、ここより綺麗だからそこで降りよう」
「うん」
チラッと彼の方を見たら目が合ってしまい、顔がカァァッと赤くなって、体温が上がるのを感じた。なんだか正和さんが凄くかっこよく見えてドキドキする。
(正和さん……大好き)
これからももっといろんな所に二人でいきたい。
「顔赤いね」
「っ……き、気のせいじゃない」
「そうかなぁ」
そう言って顔を覗き込まれれば、さらに真っ赤に染まって手で顔を隠した。
「ま、前! 運転中なんだから前見なよ!」
「はいはい」
彼はクスクス笑って、パーキングの看板の所を左に曲がる。
「んー、混んでるね」
「……あ、あそこ空いてる」
「ほんとだ」
駐車場に車を停めて降りると、夕焼けに染まっていた空はだいぶ暗くなり、月が輝いていた。手を繋がれて歩き出すと、周りは男女のカップルばかりで少し気になってしまう。
そんな俺に気付いたのか彼がさり気なく手を離そうとしたので、思わずきゅっと握り返した。
「いいの?」
「……暗いし、どうせ皆見てないし」
「ふふ、可愛い」
彼は嬉しそうに微笑んで、指と指を絡めるように繋ぎ直す。お互いの手がより密着して体温がじんわり溶け合った。
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