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第372話
(あ、フレンチ料理なんだ。……美味しそう)
メニューに書いてあるコース内容を見て、思わず顔が綻ぶ。椅子に座ったままソワソワして待っていたら、そんな様子を彼に撮られてしまって少し恥ずかしい。
全体を見渡すと、席はだいぶ埋まって、周りはカップルや友達同士で来ている人が多かった。
「来週もデートしようか。どこ行きたい?」
「……正和さんと一緒なら、どこでも」
「それ一番困る返事。行きたいとこないの?」
彼は軽くため息をつくと、そう言って首を傾げる。
(行きたいとこって言っても特にないし……)
「……まあ、純はベタなのが好きだからなー、遊園地とか行く?」
正和さんの口からそんな言葉が出るとは思わなくて、目を見開いてぽかんと口を開ける。彼はそういう所にはあまり行かなそうな雰囲気だし、そういう所は好きじゃないと思っていた。でも正和さんが嫌じゃないなら、一緒に行きたい。
コクリと頷けば、彼はクスッと笑った。
「じゃあ、来週の日曜は遊園地ね」
「うん」
「……あ、船動くって」
窓の外を眺めると、船はゆっくりと動き出して乗船場を離れた。出航してしばらくすると、お洒落に盛り付けされた料理がテーブルに運ばれてくる。口に運ぶと、見た目通りとても美味しくて、幸せな気持ちになった。
虹色に輝く綺麗な橋の下を通って、キラキラ煌めく街を眺めながら食事をする。顔を上げて正面を向けば、優しく微笑んだ正和さんと視線が絡んでドキドキした。
「……ここの料理、おいしいね」
「ふふ、純ってほんと幸せそうに食べるよね」
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