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第375話
(こんな寒い日に汗かくって……)
「うそ、へたすぎ……っ、ひっく」
これも俺が悪いんだろうか。俺が彼の弟と浮気なんてしたから、愛想を尽かしてしまったんだろうか。いつも以上に優しいのも、他に好きな子ができたから、俺に本音を見せることがなくなっただけなのかもしれない。
もともと彼は、俺に接する時はほとんど素だったけど、外ではニコニコしていて他人には優しかった。俺に対して最近優しいのも、そういうことなんだろうか。
どんな人なんだろう。
(そのうち……捨てられるのかな……)
「っく、っ……ひっ、ぅ……うぅぅっ」
ぎゅっと胸を押さえて蹲る。
俺より愛嬌があって、素直でいい子だったら、浮気した俺なんかより全然いいだろう。捨てられるのも時間の問題かもしれない。考えれば考えるほど悲しくなって、涙がボロボロ、ボロボロ、溢れ出す。
(……でも、来週もデートしようって言ってた)
普通、嫌いになった相手とわざわざデートに行くだろうか。もしかしたら、まだ俺のことを嫌いにはなっていないのかもしれない。それか、このまま俺との関係は続けながら、浮気し続けるつもりなんだろうか。彼の考えてることがわからない。
そんな風に一時間くらい泣いていたら、泣き疲れて自然と涙は止まった。途中だった着替えを済ませ、参考書と問題集を広げて椅子に座る。目が腫れぼったい感じがするが、不思議と頭はスッキリしていた。
夕飯の時間になって正和さんが部屋に呼びにくる頃には、目の腫れも顔の赤味も引いていた。美味しいはずの夕飯は味があまり感じられなかったけど、普段通り会話をしながら食事を終えて、ひとりでお風呂に入る。
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