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第377話

 正和さんは昨日と同じようにスーツを着て、昨日と同じ匂いで仕事に出かけていった。俺はいつも通り学校だったけど、授業中も彼のことばかり考えていてずっと上の空だった。  彼は、次の日もその次の日も同じように仕事で、帰ってくるのが遅い日もあった。そんな調子で月曜日からモヤモヤしていたわけだが、あっという間に金曜日になってしまって、明日から二連休だ。  ソファにぐったり腰掛けていたら、彼も仕事から帰ってきたようで、リビングに顔を覗かせる。 「着替えてきたら?」 「あ、うん」 (……制服だったらしたいって思うかな……制服姿、凄い好きだって言ってたし)  そんな馬鹿なことを考えながら彼のことをちらっと見る。 (いや、そういう問題じゃないよな……どうしたらいいんだろう)  軽くため息をついて立ち上がり、自室で部屋着に着替えてリビングに戻ったら、正和さんもスーツからラフな格好へ着替えていた。エプロンをつけているから、これから夕飯を作るんだろう。 「明日は夕方からお仕事……?」 「ごめんね、明日も朝から仕事なんだ。お昼ご飯も作っておくから、純はゆっくりしてて」 「朝からってことは普通の会社のほう?」 「……ん、そうだよ。でも帰りは早いから夕飯一緒に食べよう」 「うん」  こくりと頷けば、彼は俺の頭をポンポンと撫でてキッチンへ消えた。 (朝から、仕事……)  彼が返事をする時、少しだけ間が空いた。それはとても一瞬だったけど、彼の躊躇った様子に胸騒ぎがする。  それに、正和さんと一緒に暮らし始めて、土曜日は夜の店にしか行っていなかったのに、突然行き始めるなんて怪しい。もしかしたら、俺と出会う前は行っていたのかもしれないが、それは知る由もなかった。 (……課題終わらせよ。実験のレポートもまとめなきゃ)  同じことを何度も考えていても仕方ない。彼のことは気になるが、自分のやるべきことを終わらせてからでなければ、ますます彼に愛想を尽かされてしまう。  部屋に戻って、課題を広げると思わずため息が零れた。

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