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第378話

 憂鬱な気持ちで迎えた日曜日。今日は遊園地に行くために朝早く起きたのだが、連日思い悩んでいるせいか、どうにも体調が優れなくて、家で休んでいることにした。  寝込むほど具合が悪いわけではなかったから、正和さんが『おうちデートしようか』と言い出して、午後は彼が借りてきたDVDを観ることになった。 「……面白くない? 他のにする?」  映画を見ていてもモヤモヤと考えてしまって集中できないでいたら、彼が顔を覗き込んでくる。 「……ううん。これ観たい」 「そう?」  ソファで隣に座る彼にそっと寄りかかる。そうすれば、俺の腰に回されていた彼の手が上へ伸びて、頭を優しく撫でられた。 (ずっと日曜ならいいのに……)  昨日もあの匂いをさせて仕事に行ったけれど、帰ってきた時には違う匂いがした。正和さんの香水でも、石鹸の香りでもない、他の人の匂い。夜の店に行ったのなら、そんなこともあるだろう。けれど、普通の会社に行って、他人の匂いが移るなんてことあるだろうか。 (明日も、行くのかな……正和さん、元気だもんな)  お風呂上がりの匂いがしていたのも、きっとその匂いを消すためか、ベタベタした体を洗い流す為だったんだろう。  そんなことを考えていたら、彼の携帯電話から着信を知らせる音楽が鳴り響く。 「……携帯鳴ってるよ」 「休みだし今日は出なくていいでしょ」 「……そうだね」  着信を無視していたらぷつりと切れたが、しばらくして再び鳴り響いた。 「……大事な用なんじゃない?」 「うん、ちょっと止めるね」  彼は映画を一時停止して、テーブルに置いていた携帯を確認すると、リビングを出て行った。 (……ここで出ればいいのに)

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