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第385話
「う……ん……」
けれど、現実、そうはいかないもので、数時間してパチリと目が覚める。たくさん眠ったせいか寝不足は解消されたけど、気持ちはモヤモヤしたままだ。
「死にたい……」
こんな言葉を軽々しく言うものではないけれど、本気でそう思い始めるくらいには悩んでいた。周りは、たかが浮気されたくらいで、って思うかもしれないけれど、彼に見捨てられたら俺には行き場もない。他に家族もいない。これ以上生きる意味なんてあるんだろうか。
「どうしたの?」
そんな事を考えていたら突然声をかけられて飛び起きる。
「っ……お、おかえりなさい」
「ただいま。なんか物騒なこと言ってなかった?」
心配そうに俺の方を見ていた彼に挨拶してソファに座り直すと、彼は首に巻いていたマフラーを外してこちらに来た。
「い……や、なんでもないよ……ちょっと寝ぼけてただけ」
「そう? それならいいけど」
「うん……早かったね」
「純が心配だから早く帰ってきちゃった。体調どう? お昼はもう食べた?」
そう聞きながら隣に座った彼は、お風呂上がりの匂いでも、他人の匂いでもない、今朝の匂いのままだった。大嫌いな香水の香り。だけど、匂いが変わっていないことに安心して、そっと抱きつく。
「……正和さん」
「うん?」
「っ……仕事って……本当に行ってるの?」
思い切って彼に問い掛けると、心臓がドキドキして、唇が少しだけ震えた。
「そうだけど。なんで?」
「だって……最近、雰囲気が」
「なに?」
「う、浮気、とか……してるんじゃ、ないの……?」
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