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第389話

「この人童顔だけど、俺とタメだよ」 「えっ」 「びっくりでしょ。本当は指輪買いに行く時、言うつもりだったんだけどね」  そう言った彼に抱き上げられて、リビングのソファに連れ戻される。  まさか結婚式をするとは思っていなかったし、その準備のために動いてくれてたのも知らなかった。こんなに思ってくれる彼を裏切った挙げ句、疑っていたなんて、馬鹿な自分が恥ずかしくなってくる。 (あれ……?) 「でも、正和さん、香水変えてたし……帰ってくるとお風呂上がりの匂いしたし……お風呂、一緒に入るの嫌そうだったし……違うひとの匂い、したし……っ」  あげたらキリがないくらい怪しいと思う行動はたくさんあった。何だかうまいこと誤魔化されているような気がする。 「ふふ……まあ、わざとだよ」 「え……?」  彼の言葉の意味がわからなくて、俺はぽかんと口を開けたまま固まってしまう。そんな俺を見てクスクス笑った彼は、ソファの背に腕を広げて乗せると、楽しそうに話し始めた。 「だって、純に浮気されてショックだったし? 俺も腹いせで浮気してやろうかなあって思いはしたよ」 「っ……」 「でもそんなお馬鹿な純に合わせてもしょうがないじゃん。だからちょっと意地悪しようかなって」  そう言って、ニヤニヤと口角を上げる正和さんは、とても意地悪な顔をしている。 「それって……」 「香水は昔使ってたやつ。お風呂上がりの匂いは、わざと店でシャワー浴びてきてたから。零夜に確認してもいいよ? 一緒に入るの嫌だったのは、既にシャワー浴びてて入るつもりなかったから」  そう言った後、首を傾げながら少し考える素振りをする。 「違う人の匂いって言うのは分からないけど……そのカメラマン、帰国子女のせいかスキンシップ激しいからそのせいかな」

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