389 / 494
第389話
「この人童顔だけど、俺とタメだよ」
「えっ」
「びっくりでしょ。本当は指輪買いに行く時、言うつもりだったんだけどね」
そう言った彼に抱き上げられて、リビングのソファに連れ戻される。
まさか結婚式をするとは思っていなかったし、その準備のために動いてくれてたのも知らなかった。こんなに思ってくれる彼を裏切った挙げ句、疑っていたなんて、馬鹿な自分が恥ずかしくなってくる。
(あれ……?)
「でも、正和さん、香水変えてたし……帰ってくるとお風呂上がりの匂いしたし……お風呂、一緒に入るの嫌そうだったし……違うひとの匂い、したし……っ」
あげたらキリがないくらい怪しいと思う行動はたくさんあった。何だかうまいこと誤魔化されているような気がする。
「ふふ……まあ、わざとだよ」
「え……?」
彼の言葉の意味がわからなくて、俺はぽかんと口を開けたまま固まってしまう。そんな俺を見てクスクス笑った彼は、ソファの背に腕を広げて乗せると、楽しそうに話し始めた。
「だって、純に浮気されてショックだったし? 俺も腹いせで浮気してやろうかなあって思いはしたよ」
「っ……」
「でもそんなお馬鹿な純に合わせてもしょうがないじゃん。だからちょっと意地悪しようかなって」
そう言って、ニヤニヤと口角を上げる正和さんは、とても意地悪な顔をしている。
「それって……」
「香水は昔使ってたやつ。お風呂上がりの匂いは、わざと店でシャワー浴びてきてたから。零夜に確認してもいいよ? 一緒に入るの嫌だったのは、既にシャワー浴びてて入るつもりなかったから」
そう言った後、首を傾げながら少し考える素振りをする。
「違う人の匂いって言うのは分からないけど……そのカメラマン、帰国子女のせいかスキンシップ激しいからそのせいかな」
書籍の購入
ともだちにシェアしよう!