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第395話

「それに禁止なのは純だけだし? したくなったら、素股でもしてもらおうかな」  俺の考えなんてお見通しなのか、正和さんはニヤリと口角を歪ませて、意地悪そうに言った。きっとこれも、俺があまり悩まないように言ってくれてるんだと思う。  だから俺も、正和さんの言葉に同調しておく。 「……ずるい」 「純じゃないと嫌だって言ってるのに」  正和さんはクスクス笑って、俺の唇にキスを落とす。ちゅっ、と触れ合うだけの軽いキス。だけど、唇へのそれは凄く久しぶりで、胸がドキドキして体が火照る。 「愛してるよ、純。新婚旅行楽しみだね」  甘い声で囁くように言われれば、たちまち顔が真っ赤に染まって、腰骨の奥がゾクリと震えた。 「指輪は今週選びに行こっか」 「でも、指輪ならあるし……別に」 「それはまた別。お揃いの結婚指輪、いらないの?」  正和さんはそう言って、楽しそうに目を細めると、俺のつけてる指輪をそっと撫でてくる。  おそろいの、結婚指輪……? ということは……つまり。 「それって……正和さんもつけるの?」 「もちろん。指輪してたら女子社員のアタックもなくなるだろうし」 「っ……女子社員って」 「結婚適齢期だからか、最近凄くてさ。まあ、純がいらないなら――」 「ほしい……!」  思わず大きな声でそう言えば、正和さんはクスクス笑った。 「……じゃあ、おねだりして」 「おねだり……?」 「そう。おねだり」 「そんなこと、言われても」 「えっちなおねだりはたくさんしてもらったけど、純に物を強請られたことはないから、して欲しいなぁ。上手にできたら買いに行こう」  そう言って正和さんはソファに深く腰掛けると、俺の腰に腕を回してきた。  普通に『欲しいから買って』でいいのかな。物なんて親にもねだったことがないから、わからない。 「う、うまくできなかったら、買いに行かない……?」 「そんなに欲しいんだ? 可愛いね」  ニヤニヤした正和さんに腰を引き寄せられて、彼にぴったり密着する。

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