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第396話

 肩からじんわり体温が伝わってきて、なんだか凄くドキドキした。こめかみに軽くキスを落とされて、正和さんの方を向く。 「上手くできるまで、何度でもやり直しさせてあげるよ」  そう言われ、スーッと細めた目で見つめられれば、心臓が一際大きな音を立てて落ち着かなくなる。視線を逸らしそうになるのをグッと堪えれば、自然と上目遣いになってしまって、少し恥ずかしかった。  ごくりと喉を鳴らして口を開く。 「っ……正和さんと、お揃いの指輪……欲しい、から」 「……うん」 「か、買ってください……っ」  カアアと頬が熱くなる。理性が飛んだ状態で言う厭らしいおねだりよりも、こちらの方が断然恥ずかしい。養われている身で何かを買ってもらうのが、申し訳ないと思う気持ちもある。  唇をきゅっと固く閉じて、ドキドキしながら正和さんの返事を待った。たぶん、そんなに長い時間ではないはずだけど、焦れったく感じる。 「いいよ。よくできました」  正和さんは優しく微笑んで、俺の頭をポンポンと撫でてくれた。 「そうやって、もっと色々主張していいんだよ。純は我慢してなかなか言わないとこあるでしょ。それも直してこう?」 「――――うん」  返事をして目を伏せれば、左手をそっと取られて、指先ですり……と撫でられる。その触り方は、ゾクゾクして厭らしい気分になってくるから、やめてほしいなぁなんて思ったり。 「じゃあ、次の土曜日買いに行こっか」 「……お仕事は?」 「お休み。もともとその予定だったからね」 「そっか」  ちょっと……いや、かなり楽しみだ。自分の左手についた指輪を見ながら、思わず頬が緩んでしまう。 「他に欲しいものは?」 「ほかには、特に……」 「何かないの?」 「えー。あ、シャーペンの芯がもうすぐなくなる」  必要だった物を思い出して答えれば、正和さんは大きなため息をついた。 「はあ、そういうことじゃなくて……」  だけど、他に欲しい物なんてないし、俺は今のままで満足だ。

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